家造りの基礎知識 | 東京都荒川区の建築設計事務所Akatukidesign一級建築士事務所 http://akatukidesign.com ライフスタイルをデザインする建築設計事務所 Sun, 15 Jul 2018 16:52:59 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.1.1 http://akatukidesign.com/wp/wp-content/uploads/2017/10/cropped-faviconbig-32x32.png 家造りの基礎知識 | 東京都荒川区の建築設計事務所Akatukidesign一級建築士事務所 http://akatukidesign.com 32 32 地盤調査工事を詳しく解説・工事のチェックポイント http://akatukidesign.com/housetec/jibanchousa http://akatukidesign.com/housetec/jibanchousa#respond Wed, 02 May 2018 05:51:40 +0000 http://akatukidesign.com/?post_type=housetec&p=2150 Last Up Date:2018.05.02 [toc heading_levels=”2,3″] 地盤調査の重要性 建築の工事の前に行う工事でとても重要なのはこの地盤調査です。 建物には当然の […]

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地盤調査の重要性

建築の工事の前に行う工事でとても重要なのはこの地盤調査です。
建物には当然のことながら重さがあり、その建物の荷重に地盤が耐えられるかのチェックがこの地盤調査となります。

一般的な土地では敷地内でほぼ均等な強度なのですが、まれに地盤の強さにも傾きがあり、敷地全体を調べる必要があります。
特に傾斜地や、昔川だった土地の付近などは盛土や切土等によって地盤強度のばらつきが大きい場合が多いので要注意です。

この調査を怠ると、
①不同沈下:建物が偏って沈み斜めになる事

②圧密沈下:建物全体が大きく沈み込む事
等が起き、生活に支障が出てしまいます。

これらは、地盤調査を行う前に、周辺のボーリングデータ等の地盤データを採取して大まかに予想することは可能ですが、最終的には建設地できちんと行うべきことだと思います。
特に、住宅密集地などでは家屋がある状態だと調査が困難だったりして、解体後の調査が必要となります。
その後、予想外の地盤改良の必要性が出たりすると家がないのに建築費が足りないといった問題が発生するので事前の予想も重要になります。

また、建てる建物の構造種別や、使用する仕上げ材料、地盤改良する場合に採用する工法によっても採用すべき調査方法が変わってきます。

ボーリング標準貫入試験のチェックポイント

ボーリング試験

地盤の強度の基準となるのがこのボーリング標準貫入試験
他の地盤調査もこのボーリング試験の計測結果に換算してどれくらいの強度があるか?といった数値をはじき出す為、指標となる試験です。
しかし、このようにやぐらを組んだり、重機の搬入や時間とお金がかかるため住宅ではあまり採用されません。
コンクリート造などの重い建物や、表層では持ちそうにない緩い地盤等ではこちらの調査が必須となる場合があります。
マンションや、橋などの大型物件でも採用される調査ですので一番信頼度の高い調査方法です。

ボーリングの重り

ボーリング標準貫入試験(ボーリング調査)とはこの63.5㎏の重りを75cmの高さから落として杭(サンプラー)を30cm貫入させるのに要した回数をN値と呼び強度の基準値としたものです。

ボーリング調査工事写真

ですので、調査は実にアナログで人の手で行われます。
重りは紐で引っ張り上げ、ちょうど75cm持ち上げたら磁石が離れるようになっていてドスンと打ち付けるのです。

ボーリング調査

言葉で書くと簡単ですが、軟弱地盤では重りを落としてしまうと一気に1m以上沈んでしまい、その後の調査が不明確となってしまいます。
その為、地盤の状況を見極めながら調査を行います。

ボーリング調査

自沈層がある場合は、沈み込むのに要した時間を計測します。

Check Point

精度が高い試験といいましたが、軟弱地盤では正確な強度を計る事が出来ない弱点があります。
また、調査は1mの内30cmしか計測していないために70%のデータを無視しているという考え方もあり万全ではありません。

地盤調査

少し前にマンションの地盤調査データのねつ造問題がありましたが、このように実にアナログな調査で、調査員のミスによっても数値が異なることもあります。
最近では、やぐらも不要の機械化されたボーリング調査も開発されたようですが、熟練した職人の勘も重要だと思うだけに悩ましい問題です。

地下水位測定

地下水位

調査の過程で地下水位を計測します。
これは地下室や、RCの建物の地下ピットの施工などの際の参考にします。

土質調査
土質調査

また、調査と並行して地下の土のサンプルを採取します。
これらは地層を判断するとともに、土の強さを計測するために利用します。

孔内載荷試験

孔内載荷試験
孔内載荷試験

また、ボーリング調査の穴を利用して孔内載荷試験を行う事があります。
これは横方向の地盤強度を計測するための試験。
試験棒を杭の穴に落として圧力をかけて数値を計測します。
杭や柱状改良を行う際にデータを利用します。

スウェーデン式・サウンディング試験のチェックポイント

SS試験

住宅の規模ですとこのスウェーデン式サウンディング試験を採用することが多いです。
これは比較的軽い建物(主に木造住宅)の敷地で採用されるのですが、4~5か所の調査を簡単に行えて安価なのが特徴です。
また、ボーリング調査を行った敷地でもスウェーデン式サウンディング試験と併用することもあります。

こちらは打ちつけるのではなく、スクリューをねじった回数で強度を確認する方法です。
ロッドに5~100kgの錘を載せて調査しますが、最近は全自動式の物も多いです。
調査は10mまでしか行えませんが、木造住宅であればこれで十分なことがほとんどです。

SS試験
スクリューを回転させながら計測し、土質のサンプルを採取します。

地盤調査
地盤調査

土質が細かく把握できるのはメリットですね。
ここまできちんとサンプリングしてくれると細かい単位で地盤の強度が把握できるので良いです。

調査も数時間で済み、ほとんど騒音もないのもメリットです。

その他地盤調査・液状化試験

その他、平板載荷試験といって基礎に見立てた鉄の板を置き、実際の荷重かけて強度を計る方法があります。
また、ボーリング調査を自動的に行う機械も開発され、日々発展しています。

もう一つ重要な試験に液状化判定があります。
これは東日本大震災で被害が多数発生して注目された試験。
調査方法は様々で、机上調査や土質サンプルから土の粒度試験を行い判定を行ったりします。

しかし、悩ましいのはその結果。
海岸部などではおそらくほとんどが「液状化の恐れあり」との結果が出るものと思っています。
問題はその結果を踏まえてどうするか?
その手段がないまま調査のみを行うと不安材料だけが増えて良くないと考えています。

最終的には構造設計者の判断によるところが大きい地盤調査。
どのような補強や対策を行うか、行えるか?を踏まえ調査方法を選定することが重要です。

地盤調査のまとめ

ここで、調査のデータの解説もしようと思いましたが、基本的に実際の工事段階にはハウスメーカーの営業マンなり、建築家なりからきちんと説明があると思います。
また、調査報告書が作成されそこにどのような地盤かの考察も記載があると思うので割愛します。
ひとつ覚えておいていただきたいのですが、これらの調査結果も「予想」で実際の地盤の事は完全には解りません。

工事を進めたら、大量のガラが見つかったり昔の防空壕や巨大な岩盤が見つかったりと予想外の事が起きる事があります。
また、地盤改良が必要だと判断された場合でも、地盤保証会社の判断によっては改良なしで保証を受けられるという事もあります。
※だからといって安全とも限りません

ですので、極端にデータの悪い箇所があったり、不安なことがあれば説明を求めて曖昧なままにしておかないことが重要です。

そして、
報告書等には記載がない場合が多く、危険なのは
大きな木の伐根の跡や、家屋の解体によって生じた穴です。
土を掘ると基本的に緩くなります。
地盤調査では強固だった地盤もその後の解体等で生じた緩い地盤を見逃したまま工事を行ってしまう事のないように注意が必要です。
もし、そういった事があれば特に注意して現場を見てみてください。

※この記事は工事監理の一部を掘り下げて記載したものです
工事の全体の様子はこちらの「工事監理のチェックポイント」の記事をご覧ください。

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建築工事全体の流れを解りやすくご紹介~工事監理のチェックポイント http://akatukidesign.com/housetec/genbakoutei http://akatukidesign.com/housetec/genbakoutei#respond Tue, 03 Apr 2018 14:18:38 +0000 http://akatukidesign.com/?post_type=housetec&p=1900 Last Up Date:2018.03.29 [toc heading_levels=”2,3″] はじめに これまで旧Blogにて現場レポートという形で建築現場の進捗に合わせて工事の様子を伝え […]

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~工事監理のチェックポイント
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Last Up Date:2018.03.29

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はじめに

これまで旧Blogにて現場レポートという形で建築現場の進捗に合わせて工事の様子を伝えてきました。
今回はそれらの現場レポートをひとまとめにした工事全体の流れを解りやすく解説するページを作成してみました。
まずはおおまかな全体の流れを示し、その後各工程の詳細のページを追加していこうと思っています。
コンセプトは絵で解説する工程表です。

複数の現場の写真や様々な工法の工事現場の情報をひとまとめにしているので若干前後する部分があるかもしれませんが、家造りが始まる前に目を通していただくとより明確になるのと、工事現場のチェックのポイントが少しは解ると思いますので是非最後まで読んでみてください。

現調・敷地測量について

現場調査

土地を購入した場合、建て替えの場合、様々なケースがありますがまず工事の始まる前に行う事は現場調査です。
敷地の測量図がない場合は敷地の測量を測量事務所に依頼することになります。
公図等で代用するケースもありますが、やはり周辺環境を含めた情報を事前に確認する必要があります。

現場調査
現場調査風景

重要なのは、周辺建物の窓の位置や高低差等の情報。
これらは公図には出てこないのできちんと現地で確認する必要があります。
また、周囲のコンクリートブロックのひび割れや藻の発生状況、道路の幅やマンホールや水道メーターの位置などを調査します。

解体工事について

解体工事

建て替えの場合はまず解体工事を行う必要があります。
解体工事は建築工事を請け負う工務店に依頼する場合と、別途直接契約で解体業者にお願いするケースがあります。
直接解体業者に依頼する場合は比較サイトなどを通じて安い解体業者を探すことが多いですが、これには一つ問題があります。

地中障害物

解体業者の範疇がはっきりしないため、きちんと後処理をしない業者が多く基礎工事を行おうとしたら土の中から残材が出てきたり、ちょっとした地中障害物(建物が建っているときには想定できなかったゴミ)で割高な追加料金を請求されるケースがあります。

解体風景
解体風景
解体風景

しかし、一番怖いのは近隣クレームです。
直接依頼の場合、解体業者はお施主さんとの付き合いは1度きりになります。
ですので、解体が終われば即撤退。
その間近隣からのクレームを切り抜ければよく、その後の事を考えていません。
なので、建物はなくなっても近隣の不満や遺恨が残って本工事の際に爆発するというケースが時々発生します。

建物解体費はいわば捨てる為のお金。
まったく、新居の良し悪しには影響しないので安ければ安いほどいいのですが、下手すると近隣との関係を大きく崩しかねない工事でとても重要です。

工務店を介して依頼する場合は割高になる事もありますが、その後も関係が続くためしっかりと行ってくれる印象です。

再利用する庭石
解体風景

また、新築で利用するものは前もって打合せする必要があります。
庭木や庭石などは気軽に利用しやすいですが、床板などの素材は再利用するための手間の方が割高になる為、安くするという目的のみで利用しようとする場合は注意が必要です。

地盤調査について

ボーリング調査
SS試験

こちらもほぼ設計業務の範疇かもしれませんが、地盤の強度を確かめる為に地盤調査を行います。
更地の場合は、設計前に行う事が出来ますが、解体を伴う場合は解体後に行う必要があります。
住宅で一般的なSS試験(スウェーデン式サウンディング試験)では5か所試験を行う事が多く、計画建物の4隅と中心の地盤強度を確かめることになります。

一方、より精密なボーリング調査の場合は1か所のみ。
傾斜地などは強度の分布が異なることが多いので、SS試験を併用して行います。

地盤調査についてもう少し掘り下げた記事を作成しました。
良ければこちらもご覧ください。

地鎮祭について

地鎮祭

地鎮祭は基本的にその土地に初めて家を建てる際に土地を清める意味で行います。
その土地の神様にこれから家造りを行う挨拶を行うといった具合です。

しかし、これからの家造りの安全や新居を建ててからの繁栄を願っても行われるため基本的に地鎮祭を行う事をお勧めしています。
やはり、記念にもなりますしね。

地鎮祭儀式
地鎮祭
地鎮祭鎮め物

式の中ではお施主様が参加する鍬入れの儀があります。
始めに設計者が草刈の仕草を三度繰り返すので同様に掘る仕草を三度繰り返せばよいだけです。
初めての経験の方が大半だと思いますので心配であれば予め確認しとくと良いでしょう。

式後には式典で清めた鎮め物やお札をいただくことがあります。
鎮め物は基礎の下に埋めるものなのでそのまま工務店の現場担当者さんにお渡しするのが良いです。

地縄張り

そして、その後に地縄の確認を行います。
地縄張りとは建物の大体の位置をロープなどで記したもの。
建物の配置に大きな間違いがないかの確認を行い、設定した高さの基準点などの確認も行います。

地盤改良工事について

地盤改良

建物を建てる前に重要なのは地盤の強度です。
建物が建つと見えなくなる部分ですがとても重要になります。
地盤改良の方法も様々ありますが、地盤の構成や敷地、道路の広さなどによっても選択肢が絞られます。
もちろん、支持杭(地盤のとても固い所まで杭を打つ工法)が一番信頼が高いのですが、コストを抑えながら安全な工法を選択する必要があります。

Information

地盤改良が必要と判断された地盤でも保証会社によっては地盤保証をつければ地盤改良なしでも良いと判断される場合があります。
どちらが正解とは言いきれませんが予算に応じては選択肢に入れると良いでしょう。

建築本体工事着工

実施設計が終わり、確認申請が降り、工事契約が済むといよいよ建築工事の始まりです。
ここからは各工程に分けて詳細解説のページを少しづつ増やそうと考えています。

根切り・遣り方工事について

根切工事

そして、いよいよ着工です。
基礎の図面を基に地面を掘っていきます。
このとき重要なのが、掘りすぎない事。
掘りすぎると土は柔らかくなってしまい問題が起きる事があります。

根切工事
遣り方

その為、このように基礎の形に合わせて掘るのです。
その時に目安になるのが遣り方という工事で、建物の周囲に板を建て水糸を張って高さを確認しながら掘る事が出来るようになります。

また、捨てコンクリートといって薄いコンクリートを基礎の下に打つのですが、これは防湿の為と基礎の精度を高める為にはとても重要です。
時々省略することもありますが、その場合は鉄筋を組む際にはチェックを念入りに行う必要があります。

配筋工事について

配筋工事

鉄筋を組み立てる工事です。
最近では現場ですべて1から作ることが少なくなってきました。
加工鉄筋といって工場で組み上げたものを現場で繋げる作業がメインです。

配筋検査

しかし、そのつなげる作業でもミスが良くあります。
また、図面の読み違いによってもミスが起こります。
その為にも配筋検査が重要で、特に構造計算を行った複雑な基礎の場合はとても間違いが起こりやすいので注意が必要です。

加工鉄筋が主流となり、構造図をきちんと見れない職人が増えた印象です。
また、あまり日本語が通じない外国人の職人さんなどにも時々遭遇します。
もちろん、外国人だからダメというわけではなく、それをきちんと管理できる現場監督などが存在するかが肝となります。

コンクリート打設工事について

コンクリート打設
コンクリート検査

木造住宅の場合、基礎のコンクリートを打つ回数は2回になります。
底盤(平の底の部分)と立ち上がり(基礎の縦の部分)に分けてコンクリート打設を行います。

コンクリートの一部をサンプルとして取り出し、成分や流動性、硬化後の強度などをチェックします。

また、打設の際はバイブレータと呼ばれる振動棒を使ってコンクリートが隅々まで入り込むように注意します。
この振動が足りないと空隙ができてしまいコンクリートの強度を大きく損ねてしまう事になります。
特に、断熱材などを型枠とする工法の際はこの空隙(ジャンカ)に気づきづらいので要注意です。
RC構造の時などは木槌で型枠などを叩いて振動を与えてジャンカを防ぎます。

先行配管工事について

先行配管

コンクリート打設時に同時並行して外部の設備配管工事を行う事が多いです。

プレカット工事の注意点

プレカット工場

こちらは現場で工事が行われるわけではありませんが、プレカット工場で躯体が刻まれます。
基本的に工場までチェックをしに行くことはありませんが、加工用の図面を念入りにチェックし、間違いが起きないようにします。
この図面チェックも、様々なミスが発生します。
構造図通りになっていない場合や施工上の問題点なども見つかる場合もあり、設計監理の上ではとても重要な仕事です。

先行土台、足場組立工事について

先行土台

上棟工事の前日には、予め土台を敷設します。
防湿気密パッキンや、通気パッキン等コンクリートと土台が直接接しない様にしながら土台と基礎をアンカーボルトで止めていきます。
工場ですでにアンカーボルトを通す穴があけられていることもありますが、現場で開けたり、金物工法の場合は特殊な金物を取り付けたりします。

建て方工事

また、建て方に備え、足場が組み立てられます。
足場は専門の業者が組むのですが、敷地の大きさによって様々なタイプがあり建物の形に合わせて組み上げます。

上棟

工事の山場である建て方。
昔は現場で大工さんが刻んだりして着工から上棟までが一つの節目でしたが、現在はプレカット化が進みあっという間に上棟となります。

建て方工事について

建て方工事

いよいよ建て方工事です。
レッカー車を手配するとお金がかかるので基本的に1日で終わらせます。

その為、レッカー車が到着する前に土台に柱を建て、すぐに梁を載せられるように準備します。
組み立てる手順は棟梁の腕の見せ所。
その手順によっては精度や組みやすさなどに影響します。

建て方工事

組み立てながら建物のゆがみを調整します。
この調整がしっかりしていないと、後の大工工事の際に大変になってしまうので大工さんは真剣です。
ここの作業をしっかり行っている大工さんは少し安心できます。

床板を貼りながら組み上げ、屋根の架構が組みあがったら上棟です。
レッカー車が帰る前に屋根の野地板などを引き上げ掃除や整理を行ったら上棟式を行います。

上棟式

といっても、最近はきちんと上棟式を行う事はほとんどありません。
施主慰労という形で簡易的に行う事が多いです。
神主さんを呼ばずに現場監督さんや棟梁を中心にお酒などで柱などを清め、簡単な食事会を開く形になります。

中間検査(金物検査)について

金物検査

躯体の金物がとり付くと金物検査です。
規模によっては法令検査(中間検査)が行われますが、小規模なら現場と保証会社の検査のみになります。
建物にはご覧の様な金物が必要な強度に応じて様々取りつきます。

金物検査

アンカーボルトや筋交い金物などはほぼ間違いがありませんが、釘が止まっていなかったり、ネジが緩んでいたりすることがまれにあります。

釘抜け

そして、よく間違いがあるのが外周部の合板の釘打ち。
役所の検査の場合はキチンとチェックしていただく検査員さんもいらっしゃいますが、保証会社などのチェックでは検査対象でないのかほとんど指摘を受けたことはありません。

ただし、私が現場で確認する限り、正しい間隔で打ち付けられていなかったり、端に打ち過ぎて強度が期待できなかったり、強く打ち過ぎてめり込み過ぎてしまっていたりと、きちんと施工できている現場の方が少ない気がします。

Check Point

検査が合格したからといって安心できません。
こいうった細部は全く検査されていないことが多く、特に内部耐力壁や特殊な金物を使った部分などは見落とされていることが多いです。

防蟻工事について

防蟻工事
防蟻工事

外壁の合板が張られ、断熱材が充填される前に防蟻処理を行います。
防蟻の方法は様々ですが、最近は人体に害の少ない防蟻方法を選ぶのが主流です。

その為、薬剤も無色透明の物が多く防蟻処理された範囲が解りづらいのが難点です。
着色した防蟻材を使う事もありますが、施工した範囲にこの様にスタンプを押すこともあります。

サッシ工事の注意点

サッシ工事
サッシ廻り防水

上棟が終わると間もなく、サッシが取り付けられます。
それはいち早く雨から建物を防ぎたいからです。
しかし、この工程も実に多くの間違いが発生します。

そのほとんどは知識不足からのミス。
防水の仕組みをきちんと理解していないことから起きます。

サッシ廻りは施工手順が非常に重要になってくる箇所。
防水テープや透湿防水シートを張る順序や種類などそれぞれに意味があり大切なのです。

Check Point

素人でも確認は可能です。
水は上から下に流れるものとして壁の中に入り込んだ水が外に排出されるようになっているかを確認すると良いです。
その時、防水テープが剥がれたりした時にも簡単に入り込まないかが重要なポイントになります。

屋根板金・防水工事の注意点

屋根防水工事

サッシの取り付けと並行して屋根の防水と外壁の透湿防水シートの施工を行います。
こちらも防水紙の重ね代などが正しくとれているか?
また、端部や壁との取り合い部分などのイレギュラー部分は正しく施工できているかを確認します。

先張り防水紙

図面にきちんと記載していてもよく間違えられるのが先張り防水紙。
この様に屋根を組む前に防水紙を部分的に施工しておくことで、漏水のリスクを減らします。

FRP防水工事

バルコニーや陸屋根(屋上)はFRP防水といってガラスの繊維を重ねて防水層を形成します。
紫外線に弱いので塗装でコーティングしますが、定期的にメンテナンスする必要があります。

床暖房工事について

床暖房工事

床暖房を敷設する場合は、床の施工前に行います。
床暖房の方式も様々で工法によって手順や時期が異なりますが、当事務所ではパネルタイプではなく、一本の長いパイプを現場で施工する方式をとることが多いです。
メリットは、パイプの太さが均一で温度ムラが出にくいのと部屋の隅々まで敷設できる事。
また、無垢の床材を利用しても狂いが出にくい低温の床暖房を利用できることです。

床暖房工事

他にも温風を利用したり、蓄熱や太陽光を利用した床暖房など工事が進む前に様々な準備をします。

充填・吹付け断熱工事の注意点

断熱材工事

中間検査に合格すると断熱材を施工し始めます。
注意すべき所は断熱材の切れ目がないかです。
特にサッシ廻りなどの狭い隙間や配管などの貫通部分、筋交いなどの構造躯体が複雑な部分などできちんと施工できているかを確認します。

断熱や気密のグレードが高い家は、気密シートや断熱材に付着したビニールの施工方法が少し特殊で、それらがきちんと施工できているかも確認します。

セルローズファイバー吹込み工事

セルローズファイバーの吹込み工事の場合は専門の業者がキチンと厚みなどを確認しながら施工してくれるので安心です。
しかし、後からコンセントボックスやスイッチの位置などが容易に変更できないので事前に充分な打ち合わせが必要になります。

ウレタン吹き付け工事

ウレタンなどの吹き付け系の断熱材の施工の場合は厚みがきちんと確保できているかを確認します。
通常は厚みの確認できる厚みガイドピン等で確認しますが、ピンがない場合は柱の周辺などで確認すると良いでしょう。
結構な頻度で厚みが足りないことがあります。
人の手で施工しているので厚みにムラが出る事は当然なのですが、状況に応じて補修してもらうと良いと思います。

床の施工の注意点

床の施工

床の施工時の注意点はあまりありませんが、無垢材を利用する場合は木の乾燥収縮を考慮する必要があります。
季節によって自然素材である木は呼吸するように伸び縮みします。
夏場に施工する場合と冬に施工する場合で条件は変わりますが、この写真の様にガイドを当てて隙間を確保しながら施工します。
職人さんの経験と勘が頼りになります。

通気胴縁の注意点

通気胴縁の施工

外壁の施工前に通気胴縁を取り付けます。
これは防水シートに直接外壁を取り付けるのではなく、空気と水の通り道を設ける目的で取り付けます。
空気は太陽で熱せられた空気が上昇して循環することで住宅に入り込む熱量を抑えます。
そして、外壁の間から水が浸入した際に外に排出できる逃げ道を作っているわけです。

ここでのチェックポイントは二つ。
空気の通り道が下から上へときちんとつながっているか?
水が入り込んだ場合の逃げ道がきちんと確保できているかです。

Check Point

防水は2重になっているか?が防水の基本。
また、サッシ廻りは通気のルートが遮られる可能性が高いので確認します。

外壁工事(モルタル外壁の場合)の注意点

モルタル施工

通気胴縁に防水紙付きのリブラス(金網)を取り付けモルタルを施工します。

ファイバーメッシュ施工

モルタルのクラック防止にファイバーメッシュを入れる事があります。
かなり有効な手段ですが、やはりサッシなどの開口部廻りやコーナーなどでは乾燥収縮によるひび割れが起きる事があります。
なるべくそういった事が起きない様にできる限りの補強をします。

設備配管・電気配線工事の注意点

設備配管工事

大工さんの工事と並行して設備配管や電気の配線工事が行われます。
キチンと勾配などが確保できているか確認します。

ユニットバス工事

ユニットバスはこの時期に施工します。
壁が出来てしまうと施工できなくなる鉄骨階段等も設置します。

石膏ボード施工時の注意点

石膏ボードの施工

石膏ボードの施工が始まると大工さんの仕事も終盤に差し掛かります。
ボードが張られてしまうと躯体など見えなくなってしまうので隠れて見えなくなってしまうところを重点的にチェックします。

また、この際にDL等の位置なども決めておく必要があります。
重い器具を取り付けるか所や力の掛かる箇所には石膏ボードの裏に下地を入れておくことを忘れないようにします。(防火の規制がない場合は石膏ボードの代わりに合板を入れます)

Check Point

ひとえに石膏ボードと言っても、強化石膏ボード、耐水石膏ボード等様々な種類の石膏ボードがあります。
色や刻印が違っているので現場で正しく使い分けれれているかチェックします。

大工工事完了

石膏ボード完了

石膏ボードが張られると大工工事完了です。
この時点で中間金の支払いのタイミングになる事が多いです。

造作家具工事の注意点

家具工事

造作家具は大工さんが作る場合と家具屋さんが作る場合があります。
大工さんが作る場合は単純な構造のものが多く、扉は建具屋さんが作るといった分業になる事が多いです。
一方、全て家具屋さんが作る場合は塗装まで一貫して工場で作成し、現場で組み立てます。
家具工事の方が割高になりますが、塗装の質や高い精度を要求する家具の場合は大工工事だと難しい場合があります。

タイル・石工事の注意点

タイル工事

タイルや石工事は割り付けが肝心です。
半端な大きさのタイルが出ない様に予め検討します。
設計段階で壁の位置などを調整して割り付けに合わせた設計をすることもあります。

建具工事の注意点

建具工事

建具の枠は予め大工さんが取り付けます。
既製品の場合はそのまま扉を取り付けて完成ですが、造作の場合は建具屋さんが枠を採寸して加工することからスタートです。
造作家具の扉を建具屋さんが作成する場合はこちらも採寸します。

採寸した開口に合わせて扉を加工し、現場で金物の取り付けや掘り込み加工などを行います。

内装仕上げ工時の注意点

クロス工事

内装仕上げの肝は下地処理。
石膏ボードの継ぎ目や釘の穴を埋めて滑らかにします。
クロス工事の場合はクロスの厚みによって要求される下地処理のレベルが変わってきます。
薄いクロスや塗装仕上げの場合はより念入りな下地処理が必要となります。

塗装工事の注意点

塗装工事

塗装工事の際に気をつけたいのは色見本を作る事です。
塗る素材によっては同じ色でも完成した色は異なるものです。
キチンと塗る素材と同じもので色見本を作ってもらいましょう。

照明工事の注意点

照明工事

スイッチやコンセントプレート、照明器具を取り付けます。
間接照明などはあかりを実際灯して確認します。

設備施工時の注意点

キッチン工事

キッチンや洗面台の施工は竣工直前になります。
ショールームで最終決定を行いますが、先に施工するUBと同時期に決定することが多いです。
年度や季節をまたぐ場合は新商品と入れ替わったりするので注意が必要です。

また、タオルバーやペーパーホルダー等の取り付けも行われます。

竣工

器具などがとり付いて最後の施主検査、完了検査が済めば竣工です。
役所の完了検査は出来栄えではなく法律的に必要なものがついているか?守られているかの確認なので仕上がり状況や、図面通りに出来ているかなどは施主や建築家がチェックすることになります。

引渡し前に壁や床の汚れをチェックし、必要に応じて補修をお願いします。
また、可動部分は不具合や見つかることがあるのでできる限り開けられる部分は開けて確認するのが良いと思います。

外構工事について

外構工事

外構工事は建物が竣工した後にずれ込むことが多いです。
理想は引渡し前にすべて完了することですが植栽は適した施工時期もあるのである程度仕方ない部分があります。

根が安定するまではたっぷりと水やりを行って枯れない様に気をつけます。
また、施主検査の際にチェックした項目の補修などを行いながら残工事を全て終わらせたら引っ越しです。

竣工・引き渡し後について

建物が完成し、引っ越しが終わったからと言って建築家や工務店との関係が終わるわけではありません。
手を入れながらも永く快適に住める家。
そんな家の実現に向けて取り組んでいるわけですので、これからも良い関係が築ければと思っています。

不具合、調整などは急を要すもの以外はまとめて行う事が多いです。
特にクロスなどは下地の乾燥収縮によってコーナー部分が開いたりしてしまう事が多いです。
その為、一定期間様子を見て、収縮が落ち着いてから行う方が具合が良いです。
また、工務店の定めによって1年点検、2年点検等定期的に確認が行われることがあります。

現場監理のチェックポイントまとめ

建築工事の一通りの流れと工事監理のチェックポイントをまとめてみました。
私が現場監理をしていて間違いやミスに直面した場面を思い出しながらチェックポイントを記載しました。
しかし、注意していただきたいのはここで書かれたことが工事現場で行われていなかったからといって、直ちにそれが施工ミスとか、手抜き施工という事にはならない事に注意してください。

様々な工法の選択になる建築工事において答えは一つではありません。
あるものが抜けていたとしてもそれを補う工法を採用してたりするケースもありますし、そもそも求めているグレードが全く違う事もあります。

当事務所に依頼していただいた場合は、現場でのミスなどが起きにくいように現場でのチェックに重点をおいています。
それでもどの現場でも大体何かしらのミスや勘違いが発生してしまいます。。。
その場合ははきちんと説明して改善を行っていますが、やはり人が携わるモノづくりだからこそ100%防ぐ手立てがないのが実情です。

ですので、出来る限り自分の目でも確認する。
疑問はきちんとぶつけてみるのが一番です。
また、設計者や監督に出来る限り現場に出向いて確認してもらう事が重要だと思います。

※建築情報コーナーの関連記事リストです

  1. 設計事務所・工務店・建築家選びのポイント
  2. 建設用地購入・家屋解体時に注意する事
  3. 建物のボリュームチェック・建築家の裏技
  4. 坪単価のカラクリ・家の安い高い
  5. 中古住宅を購入時の注意事項~建て替え時を視野に入れて
  6. 住宅建築費の実際・ローン試算の手引き
  7. 固定資産税・都市計画税の課税標準額算出法
  8. 設計依頼時の注意点・図面の見方、チェックのポイント
  9. 建築工事全体の流れを解りやすくご紹介・工事監理のチェックポイント
  10. SE工法(金物工法)のメリット・デメリット
  11. IHクッキングヒーターとガスコンロのメリットとデメリット比較
  12. 太陽光発電のメリット・デメリット~補助金利用・償却年数試算方法など
  13. 蓄熱式床暖房のランニングコスト(電気代)公開・温度比較について
  14. 家相で創る幸せな住宅とは?
  15. 新築でも結露する~結露対策はどこまで行う?
  16. 建替え・リフォーム前の耐震診断のススメ

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~工事監理のチェックポイント
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・温度比較について
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はじめに

蓄熱式床暖房のランニングコスト・電気代データ
建築家の自邸で実験的に導入させていただいた蓄熱式床暖房のデータが大分集まりましたのでHPにて公開させて頂きます。
蓄熱式床暖房のランニングコスト(電気代)と非蓄熱住宅との温度比較等のデータとなります。
結果のみを書いてもしまっても条件などが明確でないと意味を成さないので、少し前置きが長くなるかもしれませんがご了承下さい。

Information

本データは2011年度に集計したものです。
その後、東日本大震災の影響を受け、電気料金の大幅改定があったのと、新規の深夜電力割引が利用できなくなりましたので、このシステムをそのまま新築に適用しても最大限の恩恵が受けられなくなってしまいました。
新電力に対応したシステムについては別途時間がある時にまとめたいと思います。

蓄熱式暖房の仕組みについて

蓄熱式暖房とは、主に石やレンガ水などの熱容量の大きな物質に熱を蓄えて利用する暖房です。
主に、電気代の安い夜間電力を利用し、電気代の高い日中に放熱させランニングストを抑えた快適な暖房を目指した物です。
それゆえ、熱源は電気、ガス、灯油など決まりはなく、一言で蓄熱式床暖房といっても様々なタイプがあり、また、床を暖めるための物や、ストーブのように床の上に設置するタイプ、天井に隠蔽するもの等多種多様で、それぞれの特色はなかなかお伝えする事ができません。

採用した床暖房のシステムについて

蓄熱式床暖房の配管
今回蓄熱式床暖房のランニングコストを公開させていただくシステムは、ヒートポンプを利用した蓄熱式床暖房となります。

ヒートポンプ式床暖房とは、簡単に言うとエアコンの室外機を利用して床暖房をするといったもので、熱効率が大変良く電熱式の床暖房に比べると電気代を1/3~1/5程度まで抑えて運転する事が出来るという仕組みのものです。

そして、蓄熱式床暖房は深夜電力を利用して運転する為、電気代も日中の約1/3で運転する事が出来ます。
よって理論上1/3×1/3=1/9の電気代で床暖房が出来るというシステムになります。

実際は、カタログ値の性能より外気温が下がると効率は悪くなるのでこのような成績は出せませんが、これから公表するランニングコストを見ていただくとその成果を確認していただく事が出来ます。

蓄熱式床暖房住宅と非蓄熱住宅との温度比較

蓄熱温度データ
電気代を公開する前に、採用した住宅と、非蓄熱式住宅の温度比較のデーターをご覧下さい。

これは、2010年10/30~2011年1/23の期間における非蓄熱住宅と蓄熱式床暖房住宅の温度グラフです。
それぞれの建物は隣接して建てられた次世代省エネ基準(等級4)の住宅で下記のような違いがあります。

蓄熱式床暖房住宅と非蓄熱住宅の諸データ
A棟(非蓄熱式住宅) B棟(蓄熱式床暖房住宅)
1階平面図 非蓄熱住宅の間取り 蓄熱式床暖房採用住宅の間取り
述床面積 80.18㎡(1階は43.62㎡) 99.41㎡(1階は46.29㎡)
暖房方式 エアコン・ガス式床暖房
掘り炬燵
但し、ガス式床暖房利用頻度小
蓄熱式床暖房のみ
運転時間6~8時間
断熱方式 壁・充填断熱 屋根・外張り断熱
窓・ペアガラス
※次世代省エネ基準(等級4)
壁・外張り断熱+充填断熱付加
屋根 外張り断熱
窓・ペアガラス
※次世代省エネ基準(等級4)+付加断熱
日照条件 9時くらいから日当たり有
一般の住宅に比べると日当たりは悪い
10時くらいから日当たり有
一般の住宅に比べると日当たりは悪い
その他 階段は扉を閉じ区画する事が出来る
エアコンを時々利用しているが、掘り炬燵を利用している頻度が高い
土間リビング採用。階段は吹き抜けており、暖気は二階まで逃げて行き暖房効率の悪い間取り
また、カーテンが一切していない為、窓部の断熱性能も悪い

蓄熱温度データ2
温度のデータを解りやすくする為、リビングと外気温、蓄熱層(土間暖中)のみ表示しました。
黒い線は外気温のデータ、赤は非蓄熱住宅のリビングの温度、紫は蓄熱式暖房住宅のリビングの温度です。
黄色い線は蓄熱層の内部の温度となります。
蓄熱式床暖房は毎日6~8時間運転していました。
12~1月期は蓄熱層に13~14度ぐらいの温度差の熱を蓄えて放熱している事がわかります。

リビングの温度は20度から25度位の範囲に一日中保つ事が出来ました。
蓄熱式床暖房を運転する前(夕方から23時)までは若干寒い感じはありますが、比較的薄着で暖房無しでの生活が出来ています。
これは、気温だけでなく放射熱による効果も大きく緩やかな温かさです。
※非蓄熱式の床暖房のような足の裏が熱々のものとは性能が異なります。

非蓄熱住宅と蓄熱住宅との温度の差は8~12度くらいの範囲で推移しています。
その為、両住宅を行き来するとその効果ははっきりと解ります。
セーターを一枚着込んでも、まだちょっと寒く感じる。そんな体感的な性能の差があります。

2011年2月21日12:00の温度比較
A棟(非蓄熱式住宅) B棟(蓄熱式住宅) 温度差
1階リビング 14.0℃ 23.0℃ 9.0℃
寝室(南) 12.0℃ 17.0℃ 5.0℃
小屋裏 11.0℃ 13.5℃ 2.5℃
外気温 7.0℃ 7.0℃

2011年2月21日17:00の温度比較
A棟(非蓄熱式住宅) B棟(蓄熱式住宅) 温度差
1階リビング 14.5℃ 23.5℃ 9.0℃
寝室(南) 14.0℃ 19.0℃ 5.0℃
小屋裏 13.0℃ 14.5℃ 1.5℃
外気温 10.0℃ 10.0℃

エアコンを利用していない日の日中の温度差を比較するとこの表のようになります。
リビングで比較すると9℃の温度差です。
20:00ぐらいまで蓄熱床暖房住宅は23.0~23.5℃の温度を保ち、徐々に蓄熱量が足りなくなり、蓄熱式床暖房の運転時間開始の23:00には21.5℃まで低下しました。

蓄熱床暖房の敷き設していない2階の寝室部分でも5度の差があり、家全体で快適さに差が出ています。

蓄熱式床暖房の一ヶ月の電気代は?

蓄熱式床暖房の一ヶ月の電気代ですが、2010年12月6日~2011年1月5日(計31日間)において
4,174円という電気代になりました。

このうち基本料金が945円含まれていますので、
実質の蓄熱式床暖房の一ヶ月の電気代
3,229円
となりました。
因みに前期の蓄熱式床暖房の電気代(基本料を除く)※1 は、
12月:1,615円
1月:3,324円
2月:3,565円
3月:3,694円
となっています。

※1 過去記事では基本料金を含めた金額を蓄熱式床暖房のコストとして公表していますが、今回は基本料金を除いた電気代を蓄熱式床暖房のランニングコストとさせて戴きました。これは、蓄熱式にしない場合も、トータルの電気量がUPし契約電力を上げる必要があるため基本料金が上がることが想定される為、純粋に使用電力量のみがランニングコストだと提示させていただいています。因みに今回のシステムの場合基本料が945円掛かっています。

※私が採用した時点よりヒートポンプ熱源の効率も格段に上がり、現段階ではもっと効率的な蓄熱式床暖房の運転が可能になります。よって電気代はこの数値より下げる事が可能となっています。

蓄熱式床暖房のメリット

蓄熱式床暖房のメリットは、なんと言っても光熱費を抑えられること。
安い電気代を利用して運転する事が出来るので、電気代を気にせずに生活する事が出来ます。
また、エアコンの風等が嫌いな方にも効果あり、ほんのり温かい環境を作り出すことが出来ます。

また、吹き抜けや階段室がオープンな場合はコールドドラフトといった冷気が吹き降ろす現象があるのですが、蓄熱式床暖房であれば気流が起きないのでエアコン等での暖房に比べ緩やかで、緩和する事が出来ると思っています。

蓄熱式床暖房のデメリット

蓄熱式床暖房の最大のデメリットは温度管理が難しいという事。
翌日の天気や気温を予想して運転する必要があり、運転方法を誤ると温めすぎてオーバーヒートする事があります。
その場合、換気をする等で温度調節が可能ですが、なんか勿体無い気がしてしまいます。

足の裏のポカポカの床暖房を一日中保とうと思うと、またそれも熱を蓄えすぎてオーバーヒートの原因になります。
家の温度を全体的に引き上げる事は可能ですが、蓄熱式の床暖房を働かせる直前にはある程度温度が下がるという事は覚悟しておく必要があります。

つまり、通常の床暖房が安い電気代でそのまま使えるという認識ではいけません。
夜間に蓄えた熱をゆっくり放熱させるのが蓄熱式の床暖房で、快適さの質が全く異なる設備となります。

蓄熱式床暖房を採用して思う事

蓄熱式床暖房を採用して思う事は、やはり温かいという事。
上記のシステム、電気代で日中はセーターなどを着ることもなく過ごす事が出来ています。
ただし、日によっては若干肌寒い時もありますが、逆にコレは季節を感じる上でも必要な事だと思っています。

そして、外から帰宅してもいつも温かい事。
家についてから暖房を運転して温めるのではなく、玄関を開けた瞬間から温かいので家に帰宅した際の気持ちに違いが産まれます。
それは、夜遅く帰宅したり、急な気候の変化の後に帰宅した際に良く感じられます。

家にいる時間だけでなく、この家の出入りの瞬間に家の温かさを感じられる事。
それが蓄熱式床暖房を採用した後に思う良いところです。

なんか、ちょっとした幸せが増えた感じ。
これは、凄く大げさな事ではなくて、こういう気持ちの生まれる要素が家には大切なんじゃないかなぁって思うからです。
こういう頭で考えずに家に帰宅してホッとする感じは家族みんなにとっても重要で、家族の絆も深めるんじゃないかな?
少し、考えすぎかもしれませんがなんとなくそう思うんですよね。。。

蓄熱式床暖房の電気代についての注意

ここで、公開させていただいた電気代は、実際の請求金額をそのまま公表させていいただいています。
蓄熱式床暖房のみ別メーターで契約している為、完全に蓄熱式床暖房分のみの電気代となっています。
しかしながら、住宅の規模や間取り、断熱性能、日照条件、また蓄熱式床暖房のシステムによっても結果は異なると思いますので、採用に当たっては建築家の方と充分協議して採用なさって下さい。
蓄熱式床暖房が暖房方法の全てでないので、ライフスタイルやコストに応じた設備を選択することが重要になります。
日中家にあまり居ない家庭とは少々マッチングが悪いですからね・・・

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・温度比較について
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新築でも結露する~結露対策はどこまで行う? http://akatukidesign.com/housetec/keturotaisaku http://akatukidesign.com/housetec/keturotaisaku#respond Thu, 25 Jan 2018 02:01:43 +0000 http://akatukidesign.com/?post_type=housetec&p=1532 Last Up Date:2018.01.25 [toc heading_levels=”2,3″] 結露100%しない家は疑った方が良い 今日は東京でも48年ぶりに-4度と厳しい寒さになりました […]

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結露100%しない家は疑った方が良い

今日は東京でも48年ぶりに-4度と厳しい寒さになりました。
蓄熱暖房を採用している我が家でも、昨日今日は少し寒めです。
(エアコンなしでは生活できる程度)

結露

でも、そんな我が家でも朝起きると寝室には少し結露が発生します。
建築家の家なのに結露するのか?
とツッコミを受けてしまいそうですが、結露を防ぐのってとても難しいんですね。

特に寝室は寝ている間にコップ1杯分/人くらいの発汗をするために湿度が上がり結露しやすいのです。
後で詳しく触れますが、
結露は家の性能だけでなく暮らし方によっても発生する為、容易に対策しづらいのです。
そして、そのような不確定要素が多い為、「100%結露はしません」と言い切れる方は逆に知識がない場合が多いように思います。
正しくは、「結露が起きにくいように充分対策しています」といった文言になるのではないでしょうか?

我が家の結露の要因

我が家の結露の原因は大きく分けて3つ

  • サッシの性能が現在の基準だと少し劣る
  • 蓄熱式床暖房だけで暖をとっているので窓周辺は少し冷え気味
  • 室内干し等が多く、湿気が多い環境がある

です。
ひとつひとつ掘り下げてみると。。。

サッシの性能が現在の基準だと少し劣る

建築当時はまだまだ断熱性のの高い樹脂サッシやLow-Eガラスが高く、予算の関係で諦めてしまいました。
当時の断熱最高基準である次世代省エネ基準はもちろんクリアはしていたのですが・・・
また、防犯ガラスを採用している窓があり、一般的な複層ガラスより性能が劣る部分がありました。

複層ガラス

複層ガラス

防犯複層ガラス

防犯複層ガラス

※トステム資料より

防犯ガラスは図の様に一般的な複層ガラスに比べガラスが1枚分増える為中間の空気層が薄くなるため断熱性能が落ちるんですね。

Low-E複層ガラス
一方、Low-E複層ガラスは特殊金属膜を挟むだけなので空気層の厚みはほとんど変わらず、断熱性能を向上させることができるんです。

この差額が・・・当時は出せなかったんですね~。

結露表

一応、トステムのシュミレーションでは複層ガラスでも外気温が-5度まで結露しない結果となっています。
あれ?東京は48年間-4度以下になっていないんじゃない?
と思うかもしれませんが、結露に重要なのは室内温度と湿度にも依存するんですね。

蓄熱式床暖房だけで暖をとっているので窓周辺は少し冷え気味

それが第二の要因。
我が家は基本エアコンなしで冬を過ごしています。
正月の里帰りから帰宅した1日だけは暖房運転しましたが、それ以外は蓄熱のみです。
その為、過度な暖房をしていないのでどうしても窓付近は寒くなりがち。
猫を飼い始めた為。昼間寝室を締め切っているのも要因です。

結露

おそらくご存知だと思いますが、空気の中に蓄えられる水蒸気の量は温度によって変わります。
理科の授業で習ったようなグラフで簡単にはじく事が出来るのですが、飽和水蒸気圧と水蒸気量の計算をしてくれるサイトがあったので、今朝の窓の温度を入力してみると飽和水蒸気量7.42g/m3という結果が出ました。

我が家の寝室は勾配天井で体積を計るのが容易でないので、一般的な6畳の寝室だとすると
体積V=2.73×3.64×2.4≒23.85m3
なので23.85×7.42=171.72g以上の水分を空気が蓄えると結露するという計算になるのだと思います。
※間違っていたらすみません

3人で寝ていると約300ml=300gの水分が汗として放出されるのでその分だけでも結露してしまう計算となってしまいますね。。。。

実際は空気の動きや室内においても湿度の偏りなどがあると思われるので計算のようには必ずしもならないのですが、寝室や浴室などでは結露を防ぐというのはかなりハードルが高いという事がわかります。

ただし、上に載せたトステムのシュミレーションの様にきちんと室温を20度まで上げれば窓付近の温度も上昇し、結露を抑えられるというのも事実です。

室内干し等が多く、湿気が多い環境がある

そして、最大の要因がコレ。
室内干しです。
共働きなので洗濯の日が限られていて、乾ききらなかった洗濯物を一時的に寝室に取り込むことが多いのです。

家事によって発生する水蒸気も結露にとっては敵となります。
また、浴室の蒸気は一番悪さしますね。

結露対策建築編

結露対策を行うとすると一番に解決すべきは窓付近。
窓を樹脂製、Low-Eガラスとすると一段と結露が起きにくくなります。

また、新築後でも樹脂サッシを内側に取り付けるなどの二重サッシ化が最大の効果をあげます。

除湿機能のある換気扇やエアコンを取り付けるのも効果的ですが、乾燥しやすい冬とは相性の悪いものです。
特に寝室などはむしろ加湿したいですよね。

窓の下にヒーターを取り付けるという奥の手もあるのですが、コスト的に住宅ではほぼ採用されません。

では、湿度を保ったまま結露を防ごうと思うと

”寒い部屋をなくす”です。

家全体を引き戸にするなど締め切る部屋がないように計画し、寒い場所を造らないというのが効果的です。
そのためには断熱性能の高い家を目指して、きちっと暖気を閉じ込めて多く事が重要です。

結露対策生活編

しかし、ここで注意していただかなくてはいけないのが

室内の水蒸気が消えてなくなるわけではないという事。
窓周りなどを改善して結露を抑えてももしも家の中に寒い箇所があればそこで結露が発生する可能性が出てくるのです。

窓が結露しなくなったからといって加湿器をガンガンたくと、収納の中や、家具の裏、床下など思いもよらない箇所で結露やカビが発生する可能性が出てきます。
これは今まで窓付近で水になってくれていたものが行き場を失って他で水になる事で被害が拡大するのです。

ですので、加湿する場合は過度になりすぎない様に。
また、外気に近い箇所や押し入れの近くなどを避けて配置するのが良いと思います。

住宅の結露対策まとめ

結露が起きにくくなる対策は新築時に出来るものが多くあります。
それらを予算に応じて施すことはもちろん、
結露の仕組みをきちんと把握し、
湿気対策をどのように行うかを考える事こそ重要
だと思っています。

窓の結露=悪では必ずしもなく、目に見えないところでの結露を防ぐ対策こそ重要で、
もちろん、窓の結露を抑える対策もないがしろにはできないと感じています。

湿気の発生しやすい、寝室や洗面所などのみ二重サッシにするという選択肢もあるのではないか?
と最近は考えています。

以上、結露についてでした。

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家相・風水と上手に付き合って家を建てよう~家相で創る幸せな住宅とは? http://akatukidesign.com/housetec/kasou http://akatukidesign.com/housetec/kasou#respond Mon, 04 Dec 2017 16:46:30 +0000 http://akatukidesign.com/?post_type=housetec&p=1252 Last Up Date:2017.12.05 [toc heading_levels=”2,3″] 家相とは 家相とは、先人が築いた住居に関する考えを簡潔な言葉で示したもので、方位による場のエネ […]

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~家相で創る幸せな住宅とは?
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[toc heading_levels=”2,3″]

家相とは

家相とは、先人が築いた住居に関する考えを簡潔な言葉で示したもので、方位による場のエネルギーの考えを取り入れて整理したものです。
家の中心に家相盤を置いてチェックする前に一度目を通していただきたい事を書かせていただいてます。
また、風水学に関しても通じることがございますので家相=風水と読み替えて参考にして下さい。

家相はもう古い?

先人の知恵を絞って出来上がった家相ですが、それは昔の事。
現代の住宅では、断熱性能や遮音性が向上し、特に窓(ガラス)の性能が随分と良くなってきています。
現代の住宅においてどこまで通用するのでしょうか?

家相は、方位によって風の流れや陽の当り方など、自然のエネルギーとどのように付き合うのが良い家なのかを考えて作られています。
ですから、それぞれの考え方は的を得ているものが多く、「家相は古い」と切り捨てずにその考え方をキチンと理解する事は無駄ではありません。

ですが、家相が全てといった家造りは私は反対です。
やはり、家相は現代の住宅性能で補える部分が多く、もっと他の事を優先して間取りを造るべきと考えるからです。
家造りは様々な角度からのアプローチが重要です。
家相盤だけを頼りに、また家相の専門家の言葉だけを頼りに家造りをするなかれといったところでしょうか?

自分なりの価値基準をきちんと持ち家造りを行っていきましょう。

家相方位盤について

家相方位盤家相方位盤とはこのように方位を8分割し、さらにそれぞれ3分割した24方位のあるものを良く見かけます。
それぞれの方向に、水廻りや玄関、神棚の位置などを設置した場合、それを大凶・凶・吉・大吉と別けて良し悪しを評価します。
この時の基準となるのが住宅の中心。
大黒柱の位置だったり、住宅の重心とする場合など。
「欠け」や「張り」(出こみ引っ込み)のある家の場合は、その中心を出すのにも一苦労です。(重心の位置は厚紙に印刷して針等で支え判別すると良い)
問題なのが、住宅の外形を変えると途端に中心の位置がずれてしまってせっかくの間取りが台無しになってしまう事です。

また、狭い家(30坪)程度では浴室やキッチンなどある程度の大きさのある部屋はいろんな方位の範囲に入ってしまい、凶や大凶の範囲から避けて配置するのは困難になります。

納得のいく家相例

家相秘伝集という種の本の中には、なるほどなと納得のいく格言も多くございます。
それは、科学的な根拠に基づき、現代の住まいにも取り入れても無理なく活かす事が出来ます。
また、その家相通りの間取りにならなかったとしても、その根拠の元を正せば快適な住まいになるはずです。
家相という結果のみを気にせずに、そういう格言の出来た過程を正しく理解し対処していきましょう。

※格言の具体的な文言は引用してはならないという指摘があったので、格言の大まかなイメージに対し私の意見を述べていきたいと思います。
もし、似たような意味の格言でプランニングに迷った際に参考になればと思います。

身の丈に合わせた大きさで家をつくりましょう。
住む人がいなくなった部屋があると家が傷みますよといった意味の格言
広い家、段差の多い家や湾曲していたり複雑な形の家はお掃除も大変です。その煩わしさはずっと続くので注意が必要です。
便所と玄関が近いと腫れ物・でき物ができるという格言
言い換えれば玄関に入ってすぐの便所は凶。コレはよく言いますよね。
昔のトイレは汲み取り式で蓋もなかったのでとても臭く不衛生だったのでしょう。
現代ではそれほど気にしなくていいと思いますが、換気経路などに気遣う工夫が必要です。
南側に軒や庇がないと口の災いが元で離婚する事になるかもしれない。また、逆に庇が深くても惰弱になると言う格言
日照をうまく遮り暑さ寒さを考えた家造りが必要です。冬と夏では太陽の入射角が違うので、夏の暑い日ざしを防ぎつつも、冬の暖かい陽気をいかに取り込むか?が鍵となります。

天窓や斜熱ガラスなど現代の技術でカバーしながら、快適な住環境を創り上げましょう。

南東や南に老人室を作ると良いという格言
朝日は南東から入るので早起きのご老人には目覚めのいい快適な場所となるのでそうした方が良いという意味です。
トイレは家の真ん中に設けてはいけないという格言
家の真ん中に有ると一見便利のように見えますが、換気も出来ずに家全体が臭くなってしまうからでしょう。
現在は、汲み取り式でもなければ、換気扇もつけますし便器も消臭型のものがあるのでそれほど気にしなくていいのですが、やはり家の真ん中では邪魔で間取りを立てづらいので、家の周囲に構える方が都合が良い事が多いです。
家の窓は東に開けたほうが良いという格言
日本は高温多湿の為、窓を多くとって換気していました。
東側に窓を設けると、朝の寒い時間に照らしてくれるので家が温かくなり快適になります。
逆に西に窓を開けると西日が眩しく、室内が暖かい時に日差しが入り込み暑くなりすぎるのと、冬は冷たい風が吹き込むからです。
その他
その他、神棚の位置は北側に据えて、南に向けるのを大吉。北西に据えて東南に向けるのが吉とされています。
また、仏壇は北西に据えて、東南に向けるのを大吉。西側に据えて東に向けるのが吉とされています。(宗派によっても異なります)

家相の根本?

このように、家相はその根拠となる話一つ一つは的を得ていて解り易い物ばかりです。
基本的に、住宅設備・機械に頼らず生きていくための工夫で、夏の暑い日ざしを遮りながら涼風を取り込む。冬の寒い時にめいいっぱい日差しを取り込みたい。キッチンは日差しを避け、汚水は換気が上手く出来るところに配置する。
そういった、科学的根拠に基づいた間取りの建て方が一つのノウハウとして短い言葉でまとめられ、家相として出来上がったものだと考えられます。

そして、その家相をより具体的に検証できるよう家相盤が発明され使われるようになったのだと思うのですが、ここでもう一度立ち止ってください。

何の為に、家相(家相盤)を使うのかを。
本質を忘れずに、家相に惑わされずに。

家相と上手な付き合い方

家相盤に照らし合わせて、ぴったりはまらない。
玄関の脇にトイレがある・・・

その事にとらわれて間取りを変更するのではなく、その心を正しく理解して対処法を考える。
コレが正しい家相との付き合い方だと私は思うのです。

始めから家相に照らし合わせてもいい家は出来ません。

家相を取り入れずとも、お施主さんの要望を100%叶える間取りはそうそう出来ないからです。
その上、トイレや玄関の位置に制約を受けてしまうとどうしても、家相以外のところを妥協せざるを得ないところが出てきてしまうのです。

コレでは本末転倒ですよね。
何の為に家を作るのか?

昔の人が住み良い家がイコールあなたにとっての最良の家ではないからです。

季節や自然に対しての考え方を盛り込んで、これからの暮らし方「ライフスタイル」を見つめ直し家造りに取り込む。その中で、この家相の考えも理解しておく。
そのぐらいのバランスでの付き合い方が良いのではないでしょうか?

家相の専門家に相談する?

設計士や不動産屋から戴いた図面を家相や風水の専門家に見せ、間取りを判定してもらおうと思う方もいるかもしれません。
ですが、私は余りお勧めしません。
専門家に相談しても迷いが増え解決にならないからです。
言うとおりに変更しようとして間取りを組み替えても、また違う人に見せたら違う問題点を指摘されてしまった。
コレはよくあるケースです。
聞けば聞くほど疑心暗鬼になって、進むべき道を失ってしまいます。

ここでひとつ違う話をしましょう。
マンションに住んでいるAさんがいます。
Aさんはとても幸せです。
では、同じ間取りの部屋(例えば上下階)に住んでいるBさんは幸せでしょうか?

決してそんな事はありませんよね。
間取りが同じでも、そこに生活する人によって住居の満足度、人生の満足度は変ってくるからです。

家相学まとめ

家相や風水の専門家は家造りのプロではありません。
その道のプロで経験も豊富かもしれませんが、そこに住む(住んだ)人の人生を全て知るわけでもないのに幸も不幸も判断できないと思うのです。
その中で、こういう間取りが幸せを呼ぶとか、このままだと不幸だとか断言すべきことではないと思うのです。

一方、我々建築家は、それぞれお施主さんの家族構成や趣味、または敷地周辺の環境、住宅設備の知識や、生活習慣等の細かいチェックまで行い総合的に間取りを組み立てるわけです。
もちろん、その中にはこのような家相の考えに基づく思想で間取りを組み立てる部分もあるわけで、家相(家相盤)や風水の導入によって一生懸命考えた間取りの邪魔をされたくないと考える建築家も少なくありません。

家相や風水という統計学的にまとめられた知見と、お施主さんと直接対話してまとめ上げられたプラン。
どちらに重点をおいて物事を考えるか?
また、家造りの目的や、どのように暮らしたいかという夢をもう一度思い出していただけたらと思います。

私が勧める家相との付き合い方は、間取りが完成して初めて家相に照らし合わせるという方法。
途中までは、それが家相に即しているかは全く考えずに、気に入った間取りが出来て初めて家相盤をチェックしてみる。
そのなかで、家相通りでない所があれば、なぜ家相で駄目なのかを調べ、その理由がどうしても外せない場合は対処法を考えてもらうというプロセスが一番上手くいくのではないかと思っています。

あくまで、家相盤をにらめっこして間取りを組み立てない。
コレが重要なポイントだと考えています。

風水について

風水については私の理解が乏しく、先生によっていろいろ考え方が違うものだと思います。
ですので具体的なことはわかりませんが、
以前私が携わった家の中には螺旋階段だと運気が逃げてしまうので壺を置いた方が良いなど”もの”で解決したことがあります。
”色”で解決することもあると思いますが、それらは基本的に心理学や統計学等きちんと裏付けのあるものがある一方、根拠が曖昧なものも多いかと思います。
なぜ?今のままでは悪いのか?
なぜ?そうすると運気が良くなるのか?
ひとつひとつ疑問を持って対処法に納得してから採用することをお勧めします。
また、空間構成にかかわることである場合はやはり建築家に相談して、可能であれば同席してもらって一緒に解決法を探るのが良いと思います。

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~家相で創る幸せな住宅とは?
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~補助金利用・償却年数試算方法など
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Last Up Date:10.09.06

[toc heading_levels=”2,3″]

初めに

まずお断りしなければいけないのが本記事は2010年に記載した記事をHP移行に伴い転記したものです。
その為、当時の税制や買取価格に基づいてシュミレーションしているので現在の価格等と異なっています。
一つ一つ現在の内容に沿って直すべきなのですが、根本的な考え方やシュミレーションの仕方は参考になると思いますので当時の内容のまま掲載させていただき、太陽光等を採用する物件があった際に改めて調べなおして訂正したいと思っています。
予めご了承ください。

補助金利用・償却年数試算方法など

太陽光シュミレーション
太陽光発電をこれから導入しようとする方に太陽光発電のメリットとデメリットをわかりやすくお伝えしたいと思っています。

売りたいソーラーパネルメーカーや太陽光発電を得意とする工務店の謳い文句や試算結果は必ずしも実情にぞぐわない場合があり、償却期間を大きく見誤る事があります。
その為、太陽光発電の損得を間違えるケースがあり、損得勘定だけで導入をしようとしている人には注意が必要なのです。

一般的に太陽光発電は政府や自治体の補助金を受けて導入するケースがほとんどだと思います。
まず、その額が大体どのようになるのか?

また、それ以外の太陽光発電が有利になる制度も紹介させて戴きますが、あくまでこのシュミレーション結果は記事を書いた当時のものという事でご理解下さい。
補助金の額や条件などが変る場合があるので、紹介する償却年数の導き方を参考にその都度ご自身で試算してくださいますようお願いいたします。

太陽光発電の魅力~メリット編

太陽光発電の最大のメリットは地球環境に優しいクリーンなエネルギーだという事。
限りある資源を大切にするワンランク上の生活だという事です。
そして、もう一つは太陽光で発電したエネルギーを売電などして家計の足しに出来るという事。
コレは後ほどシュミレーションとして紹介しますが、補助金や助成制度をうまく活用しなければなかなか初期投資を回収出来ないという事を注意せねばなりません。
しかし、その収支以上に大きな魅力は、家族が家の消費電力に気を使うようになる事。
太陽光発電で発生したエネルギーを家庭で消費した分を差し引いた余剰電力を高く売ることが出来る為、太陽光発電を導入した家族の多くが、電気の使用量に関心を持ち省エネな生活を望むようになるのです。

太陽光発電の落とし穴~デメリット編

太陽光発電のデメリットはそれほど特筆するような物があるわけではないのですが・・・
太陽光パネルの寿命が不明(パネルの汚れや劣化で発電効率が落ちる)である事。
期待した発電力が得られず収支計画が大きく狂う事があるということがデメリットではないでしょうか?
もちろん、それは始めの試算結果が甘い場合だけでなく、社会情勢や都市基盤、周辺環境によっても変化する事があるのです。
例えば、隣に高層マンションが建ち毎日2~3時間の日影が出来た場合は発電量が急激に減るでしょうし・・・

電気料金の改定で買い取り電力の単価が引き下げられたり(電力会社は発電所と違う電力が余りにも多く入り込むと制御しきれなくなる→普及しすぎない程度にブレーキをかけるのでは?)、第三のエネルギー開発により電気料金の仕組みが根底から覆るかもしれません。

また、建築的には通常屋根の上に太陽光パネルを載せる事になるので、新築の場合はさほど問題がありませんが、リフォームの場合は防水処理などの注意が必要です。
(防水層を貫通してパネル等を支持する必要があり、その部分の防水性能が損なわれる為)

また、屋根の寿命もキチンと考えに入れなければなりません。
屋根の防水保証は10~30年が一般的です。
つまりそれを超える期間での使用を考えたときには必然的にメンテナンスや一時撤去が必要になる
ということです。
それなので、少なくとも20~30年程度で償却が出来るように試算し、その後はオマケとして考えるのがリスクの少ない太陽光パネルの設置方法ではないかと考えています。
リフォームでの太陽光パネル設置の場合は家の寿命も影響してきますので、より短期間で償却できるよう設置面積や設置方法を検討する必要がでてきます。

太陽光発電の助成金~国・自治体の助成金

太陽光発電を設置する場合、国や地方自治体の助成金を受けられる場合が多いです。
年度毎に改訂がありますので、その都度ご自身でお調べ下さい。

太陽光発電助成金一覧表(2010年09月現在)
埼玉県(さいたま市浦和区)
受付期間 平成22年4月26日~12月24日 平成22年4月1日~12月28日
補助単価 7万円/kW(10kW未満対象)
※最大で70万円まで
新築住宅 2万円/kW(上限3.5kW)
※最大7万円まで
既存住宅 5万円/kW(上限3.5kW)
概要 システム価格65万円(税抜)/kW以下 太陽光発電設備を住民票における
住所地に設置(中古品は対象外)

上記は私が埼玉県さいたま市の物件で調べた際のデータです。
国の補助金は全国的な取り扱いになりますが、地方自治体の助成金は建設地により取り扱いがある場合とない場合があるのでご注意下さい。

国の助成金を受けるには、太陽光発電を導入する為に掛かった費用が一定以下でなければなりません。その為、設置費用がそれより高くなることがないという事に注目です。
国と地方自治体とも上限額が定められています。
助成金を受けるには建設前に申請手続きが必要になる場合や抽選などがある場合があるので事前にご確認下さい。

太陽光発電の新たな買取制度

「太陽光発電の新たな買取制度」がスタートしました。
コレは、一般電気利用者から100円未満/月(電気使用量が毎月300kWhの場合)を徴収し、太陽光発電の余剰電力を電力会社各社が割り増し料金で買い取るという制度です。
売電イメージ

具体的には平成22年度新設の住宅の場合、10年間48円/kWhで買い取るというものです。
H22.10現在の東京電力の電気使用料が22.86円(従量電灯第二段階料金)ですので、電気会社から買い取る電気代の二倍以上の料金で売却する事が出来るという画期的な制度です。
※10年間の買取単価はFIXされます。10年後以降のの買取に関しては保障はありません。

私はこの制度の創設によってかなりの地域と建物でメリットのある太陽光発電住宅を新築できるものと思っています。
その細かいシュミレーションは追って行いたいと思いますが、この「太陽光発電の新たな買取制度」を如何にうまく使うかがが重要な鍵となります。
太陽光発電を考えている方は、まずこの制度について理解を深めて戴きたいと思います。

Information

平成28~30年度の買取価格は25~30円/Wと依然と比べかなり安くなっています。
太陽光のパネル価格もそれに伴って安くなっているのでシュミレーションの際は現在の価格を調べてはじいてみて下さい。

太陽光発電償却シュミレーション①真南・30度切妻

切妻屋根の太陽光発電シュミレーション
ここでは35坪程度の住宅を想定し、切妻屋根総2階の建物の償却年数シュミレーションをしたいと思います。
※2010年度のシュミレーション結果となります

シュミレーションするのに重要なのが屋根(太陽光パネル)の角度と方位です。
ここでは、最も条件の良いとされる太陽光パネルを真南に向けた場合、30度の傾斜角で設置した場合の発電量で検討してみます。
また、発電容量を3.91kWh(SHARP HPにて発電量試算が出来る容量で検討してます)としてシュミレーションさせていただいてます。(35坪の家に調度設置できるるぐらいの大きさが3.91kWhとなります)

太陽光発電導入コスト(イニシャルコスト)

太陽光発電の補助金はシステム単価が65万円(税抜き)/kWh以下のものと定められています。ですので、この金額より高くなることはまずないはずですが、もろもろの諸経費も含め検討するため、ここでは仮に65万円(税抜き)/kWという事でイニシャルコストを定めてみます。(不利側の償却期間検討となります)
※導入コストは実情に合わせ値を読み替えて試算してください。

イニシャルコスト:3.91kWh×650,000円×1.05=2,668,575(税込み) -A

太陽光発電助成金額

太陽光発電の容量を3.91kWhとすれば、各補助金は次のように試算できます。

国の太陽光発電補助金:3.91kWh×70,000円=273,700円
地方自治体の助成金(さいたま市の場合):
上限3.5kWh×20,000円=70,000円
合計:343,700円 -B

実質イニシャルコスト

先程算出したイニシャルストから太陽光発電の助成金を引き、実質イニシャルコストを算出してみます。
実質イニシャルコスト:A-B=2,324,875(税込み)-C

太陽光発電発電量・電気料金試算

実際のシュミレーションは複雑な為、ここでは比較的信頼のおけるシュミレーション結果を元に説明いたします。
そこで紹介するのがSHARPのHP。
以前はもう少し詳細なシュミレーションが可能でしたが関連会社に仕事回す為か?WEB上での検証は制約がついてしまいました・・・
太陽光発電のシュミレーション結果
(建設地は埼玉県の選択がないため東京都でシュミレーションしてます)
ここでは、一ヶ月の平均電気代を仮に8,000円としてシュミレーションした結果を示します。
この一ヶ月辺りの使用電気代によって償却年数の試算も大きく変るのでとても重要な数値です。
実情に合せて検討するようにしてください。
※電力会社から電気を買う単価より売電単価のほうが高い為、多く発電して少なく使えばそれだけお特になるです。

※SHARPによるシュミレーション結果の転載
(東京都・一ヶ月電気使用料8000円・太陽光発電容量3.91kWh南向き)

年間発電量:4048kWh(92,547円分相当の発電量)
年間電気使用料:75,266円

と結果がでました。(年間電気使用料は8000円×12とはならず、均した値となっているようです)
この発電料金と使用料の差額17,281円(92,547円-75,266円)分が「新たな買取制度」によって恩恵を受けることが出来、2.10倍(新買取料金48円/現在の電気料金22.86円)のメリットを受けられる部分になります。
つまり発電量だけでなく、電気使用料も正確に弾かなければ償却年数を正しく導く事が出来ないのです。
そこで、その「新たな買取制度」の恩恵を加味して年間の発電料金を計算すると下記のようになります。

当初の10年:差額17,281×新買取料金48円/現在の電気料金22.86円+92,547=128,832円/年-D
それ以降 :92,547円/年-E

のメリットが産まれると試算できます。
つまり(128,832-92,547)×10=362,850円が新たな買取制度による恩恵で得られたメリットという事が出来ます。
※ただし、電気料金の改定がない事を前提にしていますので電気料金が値上がりするとメリットは目減りします。

太陽光発電償却シュミレーション

では、これまでの予条件を元に償却年数を試算してみましょう。

償却年数:(C-D×10年間)/E+10年間=21.2年間
となります。コレは住宅ローンを組まない場合のシュミレーションとなります。
住宅ローンを組む場合。イニシャルコスト以上のコストを掛けなければならない為(利子がついた分)結果が大きく異なります。

※30~35年ローンで組んだ場合約1.5倍の支払額となりますので、償却期間も必然と長くなります。(単純計算で1.5倍”以上”になります)

大概の場合は住宅ローンを組んで家を建てる事になると思いますので、補助金などを多用して約30年というのが太陽光発電の償却年数の目安だと思います。

実際には、月々の光熱費を安く抑えたり、発電量を増やしたりして”高く売るこ事の出来る”売電部分を増やす事で償却期間を大きく減らす事が出来ます。
また、発電時の電気使用量の少ない家庭(共働き世帯)等は、日中多くの電力を売ることが出来るので償却期間がシュミレーションより短くなります。
もう一点注意したいのが、屋根の向き角度によって発電効率が変わり償却年数にも影響を与えるという事。次の項目で別形状の家の場合の償却年数を試算してみます。

太陽光発電償却シュミレーション②真南・30度片流れ屋根

片流れ屋根の太陽光発電シュミレーション
先程のシュミレーションと建物の規模は同じで、屋根の形状のみを変えた償却年数を試算します。
ここでは、太陽光パネルを真南に向けた場合、30度の傾斜角で全面的に設置した場合(太陽光の設置面積2倍3.91×2kWh)の発電量で検討してみます。

太陽光発電導入コスト(イニシャルコスト):

3.91kWh×2×650,000円×1.05=5,337,150円 -A

太陽光発電助成金額:

3.91kWh×2×70,000円+70,000=547,400円+70,000円=617,400円 -B

実質イニシャルコスト:

A-B=5,337,150円617,400円=4,719,750 -C

太陽光発電発電量・電気料金試算:

当初の10年:(差額17,281+追加分92,547)×48円/金22.86円+92,547×2=415,703円/年 -D
それ以降 :185,094円/年 -E

償却年数:

(C-D×10年間)/E+10年間=13.0年間

という劇的な償却年数の短縮が可能となります。
発電量を多くし、高く売れる電力をいっぱい作ることで早く償却する事が可能となるのです。
もし、住宅ローンを組んだとしても、20年以内に償却可能と思われ、電気単価が値上がりするような事があってもリスクの少ない設置方法かと思います。

太陽光発電償却シュミレーション③真東・真西・30度切妻屋根

西向き屋根の太陽光発電シュミレーション
先程のシュミレーション①と建物の形状規模が同じで方位が異なる場合のシュミレーションです。
ここでは、太陽光パネルを真東若しくは真西に向けた場合、30度の傾斜角で設置した場合(3.91kWh)の発電量で検討してみます。
方位角と傾斜角による太陽光発電の割合の関係は下記の表の通りになります。

方位や角度による年間発電量の違い(真南30度を100とした割合)
方位角


0
真南
15 30 45
南東
南西
60 75 真西
真東
水平 89.3
20 98.4 98.1 97.1 95.2 92.5 89.8 86.6
30 100 99.5 97.9 95.2 92.0 88.0 83.7
40 99.5 98.7 96.8 93.6 89.8 85.0 79.7
90 67.1 66.8 65.5 63.4 60.2 56.4 51.6

SHARPのHPより一部抜粋

この表によると真東・真西の発電効率は真南に対し83.7%と落ちるので、その結果を元に償却年数を試算します。

太陽光発電導入コスト(イニシャルコスト):

3.91kWh×650,000円×1.05=2,668,575円-A

太陽光発電助成金額:

3.91kWh×70,000円+70,000=273,7000円+70,000円=343,700円-B

実質イニシャルコスト:

A-B=2,668,5750円343,700円=2,324,875-C

太陽光発電発電量・電気料金試算:

当初の10年:92,547×0.837+(92,547×0.837-75,266)*48/22.26=82,197円/年-D

それ以降 :92,547×0.837=77,461円/年-E

償却年数:

(C-D×10年間)/E+10年間=29.4年間

と、8年ばかり償却期間が長くなり約30年となることがわかります。

住宅ローンを組む場合実質1.5倍と考えると機器の寿命やメンテナンスのことを考えると採算ベースだけでの導入ではなかなか難しい選択になるというのが見えてきます。

※因みにシュミレーション①の償却年数21.2年÷83.7%=25.3年間となり、試算結果と大きく異なる事になります。「新たな買取制度」の影響でこれだけ差が出ていますので、一回一回試算する必要がある事に注意してください。
※同様に住宅ローンを組む場合も単純に1.5倍とはなりません。

太陽光発電償却シュミレーション④寄せ棟(方形)屋根

寄せ棟屋根の太陽光発電シュミレーション
シュミレーション①と建物の形状規模が同じで寄せ棟(方形屋根)の場合のシュミレーションです。
ここでは、太陽光パネルを真南・真東・真西に等分して設け、30度の傾斜角で設置した場合(3.91kWh)の発電量で検討してみます。
方位角と傾斜角による太陽光発電の割合の関係は先程の表を利用します。
3.91kWhのうち1/3は100%。2/3は83.7%ととして検証してみます。

実質イニシャルコスト:

シュミレーション①と同じ=2,324,875-C
※実際は割高になると思われますが、同じ単価で計算します。

太陽光発電発電量・電気料金試算:

当初の10年:92,547×(1/3+0.837×2/3)+<92,547×(1/3+0.837×2/3)-75,266>*48/22.26=98,068円/年-D
それ以降 :92,547×(1/3+0.837×2/3)=82,490円/年-E

償却年数:

(C-D×10年間)/E+10年間=26.2年間

と、5年ばかり償却期間が長くなることがわかります。
角度による変化で大きく償却期間が変わることがわかると思います。

太陽光発電償却シュミレーション⑤陸(ろく)屋根

ろく屋根の太陽光発電シュミレーション
シュミレーション①と建物の形状規模が同じで陸(ろく)屋根の場合のシュミレーションです。

陸屋根に設置する場合でも水平にパネルを設置する事は避け、図のように斜めに取り付ける事が多いです。その為、
架台を組むなど屋根面に設ける場合より余分なコストが掛かる
上、自ら設置した太陽光パネルにより日陰になってしまうこともあり、効率が著しく落ちる場合があります。
あまり、お勧めできない設置パターンです。
もちろん太陽光パネルの間隔を適切に設置すれば①同様の効果が得られます。

太陽光発電の設置方法の損得まとめ

ご覧のように太陽光発電の助成金を受けられるからといって全てのケースでお得になるというわけではありません。
予条件を設定するのが難しいのですが、屋根の形状や向きでこれほど試算結果が変わるということを理解していただけたと思います。
また、電気の使用状況によっても売電できる電気代が変化する為、太陽光パネルを設置した上で、省エネルギーな生活を送れば売電できる電力が増え、恩恵をかなり受けることが出来る。
逆に、日中の使用料が多く、発電量を超えて電気を消費する家庭では、売電する量が減ってしまうので、割り増し買取の恩恵に授かる事が出来ず、これらの試算結果より長期間で償却する事になるかと思います。

しかし、10年以内に子供が独立し、消費電力が減り、売電に回せる場合や逆に定年を迎え消費電力が増える場合とでシュミレーション結果が狂うことがあります。

さらには、電気料金と割増料金の差が減る事によりメリットの目減りや、蓄電池や第三のエネルギーの開発によって電気料金体制が大きく変わることがあるかもしれません。

結局の所、将来たぶん得するだろう太陽光発電に投資をしつつ・・・
地球環境を改善したいという気持ちがなければお勧めできないというのが私の結論になります。
クリーンで継続可能なエネルギー。
地球の未来に投資をする意識を持って太陽光発電の導入を考え、そしてその上で効率の良い設置方法や、断熱性能や住宅設備を選択していく事が重要なのではないでしょうか?
つまり、太陽光パネルを載せることだけに留まらず、省エネ機器の採用や高気密高断熱かというベースの性能アップも併せて行ってこそ太陽光発電の真の恩恵を受けられるということです。
では、最後に償却年数短縮を踏まえた太陽光発電設置のポイントをまとめてみましょう。

  • 電気使用料を抑える
  • 日中の電気代を減らし深夜電力利用を積極的に利用する
  • 高気密高断熱住宅にする
  • 太陽光パネルは出来る限り真南に30度の角度で設置する
  • 太陽光パネルを出来るだけ広く敷き売電額を増やす事で償却年数も短くなる
  • 住宅ローンで家を建てる場合は売電額などを早めに繰り上げ返済する事で償却年数を早める
  • 屋根(太陽光パネル)の定期メンテナンスが出来るようにする。(ガラス面の掃除など)
  • 近隣に高いビルが建つような地域では日影時間も検証した上で採用を決める
  • 屋根形状が複雑な場合は設置コストが高くなる上、効率も悪くなるので注意
  • 地球環境に優しい設備を導入したいという気持ちが重要

太陽光パネルを載せるだけで完結せず、どのように設置するか?どのように暮らすのか?きちんと掘り下げて議論し、採用を決定する事が重要だと思っています。

シュミレーション結果の注意

出来る限り公正な立場でシュミレーション結果を示しておりますが、私個人が検証し計算しているシュミレーションの為、どこかで考え違いをしていたり間違ってしまっているかもしれませんので、今一度ご自身で制度を確認し検証していただけますようお願いします。
万一誤り等を発見した方がいましたらメールにてご連絡いただけると幸いです。

太陽光発電のメリット&デメリット追記(2017.12.04)

シュミレーションからわかる通り、設置方法に明らかな有利不利があります。
また、使用する電力量によっては著しくメリットが目減りします。(使う電力が多いほど、高く売れる恩恵が少なくなる)
※ここは勘違いする方が多いかもしれませんが、簡単に説明すると売れば30円の物(売電)を20円のものに交換している事(使用電力)と同じです。この認識がとても重要です。
ですので、売電が少ないような小面積のパネル設置や、不利な方位の場合は採用する前にもう一度きちんとシュミレーションすることをお勧めします。
また、周囲の建物の影も大きな影響を与えます。
周囲に畑などがある場合も土埃などで大きく効率が落ちることになります。

とにもかくにも、他人の出したシュミレーションをうのみにはしていけないという事です。
もちろん、悪意があってそれらの与条件を無視しているわけではないと思うのですが。。。

周辺環境等実情を正しく理解して設置を検討してみてください。
もちろん、金銭的なメリットではなく、地球環境の為にエコな発電を勧めるべきなんですけどね

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中古住宅を購入時の注意事項~建て替え時を視野に入れて http://akatukidesign.com/housetec/chuukojyuutaku http://akatukidesign.com/housetec/chuukojyuutaku#respond Thu, 23 Nov 2017 07:29:57 +0000 http://akatukidesign.com/?post_type=housetec&p=1097 Last Up Date:12.06.22 [toc heading_levels=”2,3″] 中古住宅を買う際に注意したい事 私は不動産の専門家ではないので、その中古住宅が安いか高いかなどは専 […]

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Last Up Date:12.06.22

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中古住宅を買う際に注意したい事

私は不動産の専門家ではないので、その中古住宅が安いか高いかなどは専門外なのでコメントできませんが、建築的にその中古住宅が資産価値があるか?またその土地に建て替えを行った場合にどのようになるかをアドバイスしたいと思います。
中古住宅の場合は、築浅の物件を購入して殆ど手をいれずに住むケース。
中古マンションなどの場合は総リフォーム(リノベーション)して住む場合、数年住んで建て替えを考える場合と状況によって様々かと思います。
最近の新築は50年100年先を見越して作られた住宅もあるものの、現在中古市場で出回っているものの多くはスクラップ&ビルドを前提とした住宅が殆どです。
ですから、
20年30年はその中古住宅に住む事は出来たとしても、その後どのように暮らし続けるか?をキチンと見越して購入すべきだと思います。

個々の間取りや設備はお施主様の好みがありますので、建築家の考える中古住宅の正しい見極め方として、その将来の建て替えを見越した中古住宅の購入を視野に解説したいと思います。

耐震基準の変遷

建築基準法で耐震強度については細かく規定が設けられいるのですが、大きな災害や事件が起きる度に改正され、強化されてきているので、その法改正の後と前では全く強度が違う場合があります。
その主な例を下記に記してみます。


1981年(昭和56年)6月1日~新耐震基準
「震度5程度の地震に耐えうる住宅」→「震度6強以上の地震で倒れない住宅」と大幅に変更された。
2000年(平成12年)6月1日~建築基準法大改正
性能規定・限界耐力設計がされるようになった。
木造では壁位置のバランスを重視した壁量充足率チェックや小屋裏の構造への考え方などの基準が出来た為、さらに安全性がUPしました。
また、仕口に関する規定や基礎の形状などにも細かい決まりが出来ました。
2007年6月20日~元姉歯建築士による耐震偽装を受けての基準法改正
構造の規定というよりは、チェック体制が重視された。
木造住宅においては4号建築物の特例※措置で緩和されていた構造審査も厳格に審査されるようになった。

このように新築された時期において構造の強度を測る物差しが変更されているので、キチンといつの基準で建てられた建物かを理解する必要があります。
ここで注意しなければならないのが、上記の基準は確認申請を受け付けた時点での適用だという事。
つまり、1981年に完成した建物でも、確認申請が6月1より前に出されていた場合は古い基準で建てている場合があるのです。
特にマンションなどは完成まで1~2年掛かる事もあるので注意してください。

また、木造家屋の場合は、もともと寿命が長くない為、簡易なリフォームで住み続ける予定の場合は平成12年の大改正も一つの区切りとして判断すると良いと思います。

既存不適格建築物と違反建築

既存不適格建築物
竣工時は合法だったものが、法改正等によって現在の法律に照らし合わせると違反となっている場合。現状は合法とみなされるが、増改築を行う場合には現行法に照らし合わせて是正する必要が出る場合がある。
違反建築物
竣工当初から違反して建てた建物。
その違反の度合いは様々ですが、小屋裏違反から建蔽率、容積率違反など様々。
特に周辺環境に影響を与える道路斜線違反や建蔽率違反などは重大な違反で、是正・撤去が求められる事がある。

つまり、現行法に基準を満たしていない中古住宅にも二つのパターンがあるというわけです。
ここで私が言いたいのは、違反建築物を購入する場合は充分注意してもらいたいという事。

建蔽率違反などでは通常の土地の価値以上の建物が建っているというメリットで、その分割安な土地ということになるかも知れませんが・・・
そういったいい加減な手法で建てられた建物は
構造躯体もいい加減なのでは?
と私は考えてしまうからです。
なにがなんでも、土地と建物を高く売り抜けたい不動産会社。
そういった業者が、親切に?壁の中で見えない構造まで気を使って建てているでしょうか?

中古住宅の場合は、元の住人がどういった業者から購入したかの経緯をなかなか知る事が出来ませんが、この違反建築物なのか既存不適格建築物なのかという事でなんとなく予想する事はできるのです。

Information

違反建築物と既存不適格を混同している不動産事業者が多くあります。
この違いは明確に異なりまったく性質の異なるものです。
悪意が働いて違反状態になっているか?法律が改訂され違反状態になったかでその建物の信頼性にかかわる問題です。
キチンと把握する事をお勧めします。

検査済み証がなければ建築概要書を必ずチェック

さて、その違反建築物か既存不適格建築物かは素人には簡単には解らないと思うのですが・・・
まずは、検査済み証があるかないか?を確かめてください。

確認申請済み証では建物を建てる前の確認だけなのであまり意味がありません。

きちんと完了検査を受けた建物の場合は、検査済み証が交付されるので不動産屋さんに有無を確認してください。
証書は紛失していても、役所の方で受付番号がキチンとある場合もあります。

検査済み証がない場合は、どこかしら法に適合しない場合があります。
その場合は確認済み証(確認申請書)と照らし合わせて確認を行ってください。

そして、確認済み証(確認申請書)もない場合も、役所に建築概要書が保管されている場合がありますので確認してください。
建物概略が書かれているので、今建っている建物と比べて大きな違いがないかを確認します。
時々、2階建てで申請を出しているのに3階建てを建てていたりする場合や、隣家と一体の一軒の建物として申請しているのに実際は二軒建っているという場合もありますので注意が必要です。
面積なども概要書に記載されているので数値が合っているかの確認も忘れずに行ってください。

もし、建築概要書と今建っている建物があまりにも違う場合には、違反建築の可能性がほとんどです。
その場合は、キチンと構造をチェックされたものである可能性は非常に低く・・・
購入するには相当のリスクを考えなければなりません。

中古分譲住宅のチェックポイント・リスク(実例紹介)

中古分譲住宅を買う場合のチェックポイントを挙げたいと思います。
ここでは実物件を例にどういった検証が必要かをお伝えしたいと思います。
(全てのケースには当てはまらないので参考までにお伝えします)

中古住宅資料1

※図1:検討物件

友人が中古住宅を購入を検討しており相談を請けた時の話。。。
まず、「駐車場付きの3階建て物件」を検討しているのだけどどうだろう?
と相談があったんですね。(右図1のような物件)
友人から不動産会社のチラシを転送して戴き見てみると・・・
ぱっと見ちょっと危険な印象を受けたんですよ。

なぜ、そういう事を思うかというと・・・

三階建ての木造住宅の1階部分は、二階建ての住宅の1階部分より1.5倍以上の体力壁が必要になるんですね。

※特殊な工法(SE工法)などで見かけの壁量以上の強度を出す事の出来る出来る工法もあるので、この形の建物が全て危険というわけではありません。

中古住宅資料2

※図2:耐力不足

ですから、私たちが設計する時も壁のバランスを考えて設計するのですが・・・
簡単にチェックしてみたんですけど、壁の量が足りないんですよ・・・全然。

さらに、右図2の赤い壁が体力壁とすると・・・
赤い点線で囲まれた部分には体力壁がないのがわかります。
このような間取りだと駐車場の出入り口と玄関がある為、壁を作れないんですよね。
このように駐車場を設けた場合はバランスが崩れる為細心の注意が必要になるんですよ。

中古住宅資料3

※図3:偏心率

建物には重心と剛芯とがあってこの中心双方がずれていればずれているほど危険なんです。
この物件の剛芯(構造的な中心)は右図の大体バツ印らへんです。
その為、地震等があると上側はあまり揺れないかわりに下側が大きくゆれる事になります。
そして、その一番揺れの大きい部分の柱が少ない為に更に脆い構造なんですね。。。

中古住宅資料3

※図4:オーバーハング

そして、さらに悪いことに・・・
その脆い部分にニ・三階部分が迫り出していた(オーバーハング)んですよ・・・

う~~ん果してどういうことだろう?
不安になって道路の巾をチェックしてみると、道路斜線制限も大きく違反している事がわかりました。
念の為、グーグルのストリートビューで近隣建物もチェックしましたが、明らかにこの建物が突出していたのです。

※天空率等の緩和策でクリアできることもありますが、本物件では天空率を駆使しても適合不可と思われました。

しかも、二階部分の床面積から建蔽率をはじき出してみると・・・
10%以上オーバーしているんですね。。。
ますます信じられません。


そこまでの内容を友人に伝え、不動産会社に問い合わせしてみると・・・
建蔽率10%程度なんで大した違反じゃないですよ。
という事で、特に問題視もせずに購入を勧めてきたそうです・・・

果してそうでしょうか?

通常では建てられない大きさで建っているからお得!
と喜んで買うべきでしょうか?

いや、私は違うと思います。
そんな違反を犯して建てられている建物が、見えない部分にもちゃんと気を使って建てているでしょうか?
答えは明白だと思います。
100%とは言いませんが・・・

そこで、もう少し掘り下げて調査することに。
友人には不動産屋さんに確認申請書の控え若しくは、検査済み証が有るかを聞いてもらう事にしました。
もし、ない場合は建築概要書が役所に保管されていると思うのでそれを手に入れてくれないか?と。

–後日—

案の定、完了検査を受けていない物件だったので、建築概要書のみが手渡されました。

そして驚愕の事実が!

中古住宅資料4

※図5:実際に建っている建物
  三階建て二棟

中古住宅資料5

※図6:建築概要書の建物
  二階建て一棟

建築概要書では、隣の建物と一体の一軒。
しかも、「二階建て」として申請が出されていたんですね。

そう、それと・・・
この建物、その為基礎が隣と繋がっていたんですよ。

もう、何がなんだかわかりません・・・
きっと、二階建てでは採算が取れなく、無理やり三階建てにして売っちゃったんでしょうね・・・


結局考えられる不信点は

  • 建蔽率オーバー
  • 構造違反(コレが一番問題) 
  • 道路斜線違反
  • 日影規制違反
  • 準耐火建築物違反

などなど・・・

こういった経緯で建てられた三階建ての建物なので・・・
構造がまともとは到底考えられないんですよね・・・

そして、それ以上に私が問題視するのは・・・

基礎がつながっているという事。

万一、建て直しする事になったら容易に建て替えする事が出来ない事を意味してます。
そして、コレだけの違反をして延べ床面積が80㎡ちょっとしかないんですね。
恐らく、法に適合して建て替えようとすると物凄く小さくなってしまうんですよね・・・

その土地にどんな家が建て直しできるか?
そのイメージが全くもてないんですよ。


友人はこの物件とは縁がなかったものとして、購入を断わりましたが・・・
きっと、他の方が購入する事になったのかな?

中古物件で「安い」物件にはやはりそれなりのリスクがあるからこそ安いのだと思います。
競売物件だから安い。
というのも一理ありますが・・・

問題があるから競売物件になっているケースもあります。
よ~く考え調査して購入してくださいね。

目の前に見えている建物だけを皆さんが購入するものではないのです。
目に見えない部分。
将来の使い道までを考え、後悔しない不動産探しを行いましょう。

違反建築も最後は土地の価値しか残らない

中古住宅を購入する場合は、最後は土地しか残らないと思っていいでしょう。
分譲住宅の場合は、民法などを無視して敷地いっぱいに建てている場合でも、建て替えをする際には同じように敷地いっぱいに建てられる保証はありません。
(同様に隣家が民法を無視している場合は交渉の余地があります)
また、基礎が一体となっていたりする場合は、建て替えに制約が出来るのと・・・
そもそも違反建築が建っている場合は、当然ながら建て替えの場合は法に適合させなければいけないので、同じ様なボリュームの建てる事が出来ず、極端に小さい住宅しか建てられない土地になってしまいます。

ですから、今そこに建っている建物だけを見て判断するのでなく、その土地がどれだけの価値があるか?が重要になります。
でなければ、使い捨ての利用価値のない土地だけが残ってしまう事になります・・・

違反建築を購入する場合はその点も頭に入れ判断してください。
(万一、大震災で倒壊した際には建て替えたくても思うように建替えられない事も)

Points

建て替えの際に必ずしも同じ大きさで新築可能とは限りません。
現状違反している建物であればほぼ間違いなく小さく建てなければならなくなると思われます。
ましてや、違反して建てなければならないような敷地という事で再建築が非常に厳しい条件の土地の可能性が高いので注意が必要です。

また、違反建築物の場合はローンを組む場合にも物件価値を認められないため(担保価値が低いので)、ローンの審査も厳しいものとなります。
購入する際にこの基準をクリアすれば良いという訳ではなく、逆に売らなければならなくなった場合には、審査が厳しい為、ターゲットが制約されるので販売するのに梃子摺る事が予想されますのでご注意下さい。(すぐに売れない為、競売や任意売却で流通している物件も多いと思います→だから逆に安かったりします)

リフォームローンに気をつけて!

中古物件を購入してリフォーム・リノベーションを行う場合、注意したいのがリフォーム資金。
お施主さんの話を伺っていると普通に住宅ローンを組めると思っている方が多いのですが、一般的には住宅ローンは組むことができません。
このケースで適用されるのがリフォームローン。
住宅ローンより金利が悪く、返済期間も短く条件が厳しいのが特徴。

一般的に

  1. 金利:割高
     ※環境配慮設備や耐震改修等には割引が有る事も
  2. 返済期間:10~15年程度
  3. リフォーム物件は所有権を有するもの
     ※親族が所有の場合は同居に限る事が多い
  4. 支払い条件:完了時一括支払いが原則
     ※つなぎ融資など無いのが一般的ですので、契約時金等は現金の用意が必要に
  5. 返済額:返済期間が短いため、毎月の返済額も割高に
     ※中古住宅購入のローンと一緒に支払うとなると負担が重くなります

対策:

中古住宅を購入時にまとめて住宅ローンを組む事が可能であれば、それが最善です。しかし、中古購入時は時間がなく、リフォーム費用まで見通せずに契約する事の方が多いかと思います。

購入後は住宅ローンを借り入れ済の銀行で、借り換え融資を実行して住宅ローンに組み込むことも可能なケースがあるようです。
その場合、手数料が二重にかかることになってしまいます。

物件探しをしていると、リフォーム資金を考えずに探していることがほとんどですよね。いざ、お気に入りの物件が見つかると、他のユーザーに買われない様に購入を急がされてしまいます。
その時にはリフォームのことなど考える暇も無く銀行との手続き等に追われがちです。
リフォーム前提の中古物件を購入予定の場合は初めに銀行にも相談しておくと良いでしょうね。

中古物件探しを始めると、すぐにすばらしい条件だと思う物件に巡り合います。
しかし、まだまだ目は肥えていません。
もっといい物件が眠っているかもしれないのに、そう思い込んでしまう場合が多いように思います。
出来たらはじめの数件はスルーしてじっくり探すだけの余裕が欲しいところですね。

最後にお断り・・・

最後に、断りを入れておくと・・・
違反建築物だから絶対購入しちゃ駄目よ!と宣伝しているわけではありませんのでご理解下さい。

違反建築物を購入する際は、その持ち主が「違反」に対する責任も引継ぐことになります。

悲しいことに、世の中には違反建築物が数多くあるのは事実です。
そういった建物に、何一つ不自由なく(もしかしたら知らずに)暮らしている方もいるわけで・・・
そういった方が全て悪者だという話ではなくて・・・

これから購入を考えている方にそれらのリスクを正しく理解して頂き、自分なりの判断をして頂きたいと思うので記事にしています。
(耐震偽装事件以来、これらの違反建築物に対するチェック体制はかなり強化されています。その為、建替えの際は厳しい基準で審査されることになります)

物件探しを依頼している不動産によっては、これらのリスクを正しく説明せずに、購入を勧める場合もあると思うので、そういった方の為に少しでもアドバイスになればと思って書いています。

不動産屋は物件の売り買いのプロですが、我々はその敷地に建物を建てる・計画するプロなので、我々の立場からして再建築が難しい土地の購入へはちゃんと理解した上で購入を考えてもらいたいと思っています。

中古物件探しはとても難しく、気力も体力も使うことと思いますが、めげずに頑張ってください!
諦めなければきっといい物件が見つかると思いますよ。

※建築情報コーナーの関連記事リストです

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  5. 中古住宅を購入時の注意事項~建て替え時を視野に入れて
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  8. 設計依頼時の注意点・図面の見方、チェックのポイント
  9. 建築工事全体の流れを解りやすくご紹介・工事監理のチェックポイント
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  11. IHクッキングヒーターとガスコンロのメリットとデメリット比較
  12. 太陽光発電のメリット・デメリット~補助金利用・償却年数試算方法など
  13. 蓄熱式床暖房のランニングコスト(電気代)公開・温度比較について
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Last Up Date:10.11.22

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IHガスの採用前にもう一度特徴を比較検証しましょう!

新築時に奥様がまず悩むのがキッチンの熱源。IHクッキングヒーターとガスコンロどちらを採用しようか検討する事になるかと思います。
本稿では建築家自らが参加したIHクッキング教室とガスクッキング教室の体験を踏まえてそのメリットとデメリットを紹介します。
それぞれ体験教室に行ったのが2007年6月であるのでそれぞれその当時より改善が進んでいるかもしれませんので詳細はその都度ご確認して戴きますようお願いします。
出来る限り中立な立場でメリットとデメリットを紹介しています。ですが、IHとガス双方のメーカーが示す資料を基に記載している為、必ずしもメリットやデメリットとしうまく区分できていない場合があるかと思います。
また、機種の改善によりデメリット等が補われている場合があります。(現に約三年の間にIHは目覚しい進化を遂げています)予めご了承下さい。

I’m Sorry

2010年に記載した記事なので現在はさらに改善されていると思います。
時間を見つけて再検証記事を書きたいと思ってはいるのですが・・・

IHクッキングヒーターのメリット&デメリット

IHクッキングヒーターの特徴

IHイメージ
IHとはインダクションヒーティング(電磁誘導加熱)のことで、磁力線で鍋自体を発熱させる仕組み。
火を使わずに調理が出来る為安全である事。
調理後に簡単にトッププレートを拭く事が出来る為、掃除がしやすく衛生的と考えられています。

IHクッキングヒーターのメリット

IHクッキングヒーターのメリットはなんといっても直接火を使わないので安全だという事。
特に冬場に袖の長い衣類を着て調理する際に、延焼する事故が多いのですがその心配がありまん。
そして掃除が出来やすく、綺麗なキッチンを保てる事です。
天婦羅調理の際にフライパンにフキンを掛けて油が飛び散るのを防ぎながら調理できるなどメリットがあります。

では、メリットを箇条書きにて挙げてみましょう。
IHコンロイメージ

  • 直接火を使わないので安全
  • トッププレートをさっと拭けるので衛生的・拭きこぼれも安心
  • 天板がスッキリしていてカッコイイ
  • 使用していない部分を調理スペースとして利用できる(狭いキッチンでは特に有効)
  • 調理本やといた卵などを近くに置きながらの調理も問題がない
  • 内装制限※1が適用されない為、自由な内装が可能
  • IHの調理風景

  • 天婦羅火災の危険が減る、揚げ物が簡単(新聞紙で蓋をする事が可能)
  • IHヒーターを利用すると電気代が安くなる(スマイル・クッキング割引・上限525円/月)
  • 高齢者や子供でも安心・安全
  • 夏場の調理も暑くない
  • 災害時の復旧が早い(ガスより電気のほうが先に復旧すると思われる)
  • プロパンガスを利用していたお宅の場合は買い替えメリットが高い
  • 保温が楽(焦げ付きを気にせず温度を保ち安い)

※1:内装制限とはキッチンの上に部屋がある場合には燃えにくい内装を使わなければいけない決まり

IHクッキングヒーターのデメリット

IHクッキングヒーターもメリットばかりではありません。
デメリットをキチンと把握した上で使用を検討する事が重要です。
最大のメリットである安全性も実は使い方を誤ると事故につながる事があります。
安全を過信する事が一番良くないと思っています。
ガスとIHの比較資料

  • 使い方を誤ると火事になる事がある(使用方法をキチンと守りましょう)
  • コンロを同時利用する際、最大火力を得られない事がある(内線規定で容量が決められているので)
  • 調理器具が重い(高齢者にはキツイ))(オールメタル対応なら従来どおり)
  • オールメタル対応では最大火力が出ない(3Kw火力のコンロでもアルミ・銅は2.6Kwまで)
  • 一定の大きさの鍋やポットしか使えない
  • 中華や肉厚のある料理が苦手(鍋底のみが高温となる為、縁が熱くならないし対流が起き辛い)
    IHの対流
    ※三菱電機製品はIHでも対流が起きるように工夫されているようです。(2010.05現在))
  • 日中の使用が多いと電気代はUPする
  • 冬場の調理が寒い
  • 油煙が拡散しやすい(上昇気流が発生しない為。IH専用のレンジフードを利用する事で対応可能)
  • 鍋やフライパンを持ち上げてあおりながらの調理が苦手(光センサー器具は改善されました) 
  • 慣れないと使えない(高齢の方は早めの導入が鍵)
  • 火の危険性を子供に伝えるチャンスを失う
  • 揚げ物に使う油の量が決まっており少量の揚げ物に適さない(守らないと火災の危険性有)※100~200g程度で調理可能な機種もあります(2010.05現在)
  • 海苔等の炙り調理が出来ない(ラジエントヒーター付きの器具は可能です)
  • 電磁波が少し心配(私は妊婦さんにはあまりよくないのではと考えています)

ガスコンロのメリット&デメリット

ガスコンロの特徴


ガスコンロはどなたもご存知かと思いますが、実はそれが落とし穴。
従来のコンロに比べ最新の機種は安全性や清掃性に優れた器具が多くあります。
それらの機能を知らずにIHに飛びつくのはちょっと勿体無いです。
ゴトクが外せ簡単に拭き掃除の出来るコンロや、全口センサー付きで安全性の高いガスコンロも発売されています。

ガスコンロのメリット

ガスコンロのメリットというと正直何を挙げて良いか迷う所があります。
それは、今までガスコンロが一般的で他に比較するものがなかったからです。
ここでは
IHクッキングヒーターや従来のガスコンロに比べて良い所
を挙げてみます。
ガスコンロイメージ

  • 高火力バーナーを利用する事が出来る
  • 中華などであおりながら調理できる
  • 料理が美味しい(私の感想です。特にハンバーグや餃子など)
  • 調理器具を選ばない
  • すぐ加熱するのですぐに調理を始められる(調理器具にもよる)
    ガスコンロお掃除
  • 意外と掃除も楽(ガラストップのコンロの場合・IHに比べれば劣ります)
  • 意外と安全(温度センサー完備で揚げ物も安心・IHに比べたら安全ではありません)
  • 直感で調理が出来る
  • 冬場の調理が温かい

ガスコンロのデメリット

ガスコンロのデメリットはなんといって直接火をかざすので危険があるという事。
ですが、それはIHと比べて危険という訳で利用方法を誤らなければ即火災に繋がるというものではありません。
従来のものに比べ安全装置も多数用意されているので、一度手に触れて確かめると良いでしょう。

  • 火の元が危険(特に高齢の方や子供にとって) 
  • 揚げ物火災の危険性が高い
  • 夏場の調理が暑い(充分に換気や空調対策が取れないキッチンでは厳しい)
  • 内装制限がある為、木などの燃えやすいインテリアを利用しづらい
  • 災害時に復旧が遅れる可能性がある(別途卓上IH等で充分対応可能)
  • プロパンガスの場合はガス代金が高い事も
  • 冬場結露する(空気を燃焼する為、水蒸気を発生する)

エコ的観点でのガスとIHの比較

エコという観点でガスとIHを比較してみると意外な答えが出てきます。
それはガスの方がエコ(エコロジー)だという事です。
エコノミーという指標ではIHが上回る事がありますが、それは政府の原子力発電所に投じている税金のおかげである部分が多く、実際はIHで調理する方がいっぱいCO2を発生する事になるんですね。

東京ガスの説明ですと

電気を発電する時に大量のCO2を発生していて、各家庭に届くまでの送電ロスが63%もあるという事。
一見クリーンなエネルギーの様に見えるIHですが、CO2発生量は都市ガスの2.7倍だという事です。

IH=クリーンでエコというイメージは実は間違っているのです。

オール電化という選択肢

IHクッキングヒーターを導入する時にセットで考えるのがオール電化住宅だと思います。
電化上手などの時間帯別割引料金を適用し、全電化住宅割引を使う事で更なる割引料金で電気を使う事が出来るメリットがあります。

しかし、日中の電気利用の多い家庭や断熱化されていない住宅の場合は空調コストがかさみ、かえって電気代が大きくなる事があります。
使用する家電製品や照明器具を確認し、日中の電気代を抑える事でオール電化住宅のメリットを高めましょう。

マンションなどの高気密高断熱の住居の場合は電気代が割安になる傾向があるようです。
戸建住居はマンションに比べ温熱環境が苛酷なため、利用方法によってはオール電化住宅の方がランニングコストが高くなることがあります。

また、最大のメリットはプロパンガスのお宅です。
都市ガスより割高なガス料金である事も多く、オール電化にする事でコストを抑えること出来ます。
また、新規でガス管を引き込むなどの工事費も抑えられるのでとても魅力的なプランです。

ガスとIHクッキングヒーターのまとめ

ここまでガスコンロとIHクッキングヒーターのメリットとデメリットを紹介しましたが、私自身どちらがいいというお勧めはありません。
ライフスタイルや導入する意図、お施主様の重視するポイントが何かという事で、どちらがマッチするかというのが変ってくるはずです。
特にこれらの設備機器は寿命があるもので、いずれ交換が必要になります。
子育て中は教育や手早い料理を重視しガスコンロを採用し、子供が独立後にIHクッキングヒーターに交換するという考え方もありますし・・・
逆に、子供に積極的に調理を手伝ってもらいたいのでIHを導入して危険を減らし、危険がなくなってからガスコンロに換えるという考え方もあって当然だと思うのです。
ただ、どんな選択をするにせよ、表面の利点ばかりを眺め選ぶのと、デメリットも把握した上で選ぶのとでは根本的に違うと思っています。
今回はそういう意図で、デメリットまで細かく説明させております。

また、そういったデメリットを補う対応を建築側で考え、プランニングする事も重要です。
ガスを選ぶのかIHを選ぶのか?
実は家造りにおいてとっても重要なポイントなのです。

ガスとIHクッキング教室体験のお勧め

IHクッキング教室電力会社・ガス会社がそれぞれクッキング教室を開催しています。
(東京であれば東京ガスと東京電力)それぞれの長短を詳しく説明しながら調理を体験する事が出来ます。迷われたら体験教室に参加することをお勧めします。(無料から数千円で材料費込み)
それぞれ、自社の利点のみをアピールしますので出来たら双方の体験会に参加すると良いと思います

※建築情報コーナーの関連記事リストです

  1. 設計事務所・工務店・建築家選びのポイント
  2. 建設用地購入・家屋解体時に注意する事
  3. 建物のボリュームチェック・建築家の裏技
  4. 坪単価のカラクリ・家の安い高い
  5. 中古住宅を購入時の注意事項~建て替え時を視野に入れて
  6. 住宅建築費の実際・ローン試算の手引き
  7. 固定資産税・都市計画税の課税標準額算出法
  8. 設計依頼時の注意点・図面の見方、チェックのポイント
  9. 建築工事全体の流れを解りやすくご紹介・工事監理のチェックポイント
  10. SE工法(金物工法)のメリット・デメリット
  11. IHクッキングヒーターとガスコンロのメリットとデメリット比較
  12. 太陽光発電のメリット・デメリット~補助金利用・償却年数試算方法など
  13. 蓄熱式床暖房のランニングコスト(電気代)公開・温度比較について
  14. 家相で創る幸せな住宅とは?
  15. 新築でも結露する~結露対策はどこまで行う?
  16. 建替え・リフォーム前の耐震診断のススメ

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建設用地購入・家屋解体時に注意する事 http://akatukidesign.com/housetec/tochikounyuu http://akatukidesign.com/housetec/tochikounyuu#respond Thu, 16 Nov 2017 01:47:58 +0000 http://akatukidesign.com/?post_type=housetec&p=1058 Last Up Date:2017.11.16 [toc heading_levels=”2,3″] 住宅用地のチェックポイント 家造りを検討している方や始めたばかりの方は、その土地にどんな大きさ […]

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Last Up Date:2017.11.16

[toc heading_levels=”2,3″]

住宅用地のチェックポイント

家造りを検討している方や始めたばかりの方は、その土地にどんな大きさの建物が建つかすぐには想像できないのではないかと思います。
特に都心に家を建てる場合は、敷地の広さが充分に取れず容積率(敷地に対する床面積を制限するもの)や建蔽率(敷地に対する建築面積を制限するもの)ギリギリの設計を強いられる事が良くあります。専門家でも法律によって複雑に絡み合ったパズルを解くような作業は時間を要し、簡単な事ではありません。
ここでは、詳細な検証方法は概略を紹介し、土地購入時や建て替えの際に注意すべき事項を中心に説明したいと思っています。

また、購入検討用地にどれくらいの建物が建てられるかといったボリュームチェック方法はこちらをご確認下さい。

これから土地を買う場合の土地の見方

これから土地を購入しようという場合は大抵、建築家やハウスメーカー等の担当者がついていないことが多く自分自身でイロイロ判断しなければならない事があると思います。
もし、相談できる専門家がいたら早いうちに相談する事をお勧めしますが、基本的には住宅が建てられるという条件で土地を購入していれば問題ないはずです。
しかしながら悪徳な業者もいないとは限らないので、どうしても心配なら特約事項を設け、建物を建てられない場合の解約の逃げ道を作っておく方法も有ります。

また、あまりにも周辺の市場価格より安い土地の場合は何らかの問題があると疑って調査する必要があります。建物は建つ土地だけれども、制限が厳しく思うように建物が設計できないような土地だったり、軟弱地盤や土砂災害の危険性がる場所だったりと見た目ではすぐに解らない問題をはらんでいる危険性があるからです。

一つの判断基準としては、周辺に建つ建物を見て予想する方法があります。通常同じ用途地域内の土地であれば斜線制限※は同じ為、受ける制約が同じです等による制約を大まかに把握する事が出来ます。
また、周辺にRCの建物がない場合は地盤が悪い事も考えられます。

とりあえず土地購入時の注意点を簡単にまとめておきます。

1.市街化調整区域ではないか?

一般的な宅地であれば問題ありませんが、周りが田畑しか見当たらないような場所は市街化調整区域である場合が有ります。市街化調整区域は、名前の通り住宅等の制限をする場所で更地から住宅を建てる場合は都市計画法等の許可が必要であり、一定の条件が揃わなければ建築する事が許されない土地です。
その為、土地価格が安い事が多い反面リスクの高い土地といえます。
土地を販売する人の意見だけでなく、早いうちから専門家に意見を聞いて検討すると良いと思います。

主にこの地域に建物が建てられる条件としては、
1.この法律が出来る前から住宅用地だった(法改正により100%建てられる保証がなくなりました。)
2.農業や漁業に従事する方の物置・家屋など
3.集落が形成された地域への連担制度を利用した新築・建替え
等が挙げられます。

注意が必要なのはそこに従前の建物があるからといって必ず建て替えが出来るとは限らない事です。役所の担当者が変わった途端、建築ができなくなる事もありますので気をつけてください。
また、配水管や上水道、ガス管などがない場合もありこれらの新設には多額の費用がかかる事があります。前もって費用等を確認する必要があります。

2.生産緑地ではないか?

東京都内では練馬区などでよく見受けられるのが生産緑地です。
コレは農家の方が30年という単位でその土地を農業に使うという事で税金の大幅免除を受けている土地です。
生産緑地から宅地に変更するには一定の手続きが必要な為、きちんと宅地として使えることを契約書に盛り込んでいただきましょう。

3.風致地区ではないか?

風致地区イメージ購入予定の土地が風致地区でないかを確認してください。風致地区とは景観の良い地域等を風致地区と定め緑や河川を保護する為の定めです。
その為、建物の色彩(外観の)や建蔽率、敷地からの離れ寸法(隣地境界線から2m以上壁を離さなければならない等)、高さ等に制限がある厳しいものです。
用途地域により定められた建蔽率より小さく建てなければならない場合が場合がほとんどなので、敷地が充分に大きくないと建築する事が非常に困難になります。
建築は可能な土地だけれども、実質建物(希望する)が建てられないなんて事のないように購入前に予め検討をする事をお勧めします。

4.接道はしているか?

接道イメージ住宅を建てる場合、敷地が少なくとも2m以上接している必要があります。
一見道路に接しているような土地でも、道路のように見えて水路(暗渠)であったり、建築基準法上の道路でない場合があります。
特に私道にのみ接続する場合は権利関係や、水道・ガス等の引き込みにおいて問題が生じる事がありますので注意が必要です。

また、前面道路幅員についても注意が必要です。
ここで言う道路とは4m以上(一部では6m以上)の道の事をいい、それに満たない場合は後退する必要があります。
コレをセットイバック(道路後退)と呼びますが、道路の中心から2mづつ割り振ってセットバックする場合と、対面が崖地などの場合は一方的に後退する必要があったりするので、後退線がどの位置になるか確認が必要です。

さらに、角地(道路と道路に挟まれている土地)の場合は隅切り(土地の端部を斜めに切り取る)の必要がある場合があり、更に敷地が狭くなってしまいます。
このセットバック部分と隅きり部分には建築する事が出来ないので、これらを除いた敷地面積を提示してもらいましょう。

※隅切りがある場合は建蔽率が10%割り増しになります。

5.特殊な敷地形状の場合(旗状地)

旗状敷地イメージ道路から路地状の敷地が続きその先が広がっている土地を旗状地と呼びますが、その場合は通路の有効幅員などが制限されますので注意が必要です。
寸法にゆとりがない場合はフェンスやブロックなどを設けられない他、通路状の部分の長さによっては三階建て以上の建物を建てられないなどの制約があります。
面積に対して土地の価格が安い事が多いですが、通路状の部分には満足に建物を建てることが出来ない為、駐車スペースなどに利用可能かなどのチェックが必要です。
三階建て以上の建物や共同住宅をを建築予定の方は特に注意が必要となります

6.斜面地や敷地内高低差がある場合

斜面地のイメージ斜面地の場合注意しなければいけないのが地盤の状態で、土砂災害などに見舞われないよう注意が必要です。チェック方法としては、周辺の擁壁やブロックにひび割れがないかどうか、造成がいつごろされたものなのか等が判断材料になります。
また、急傾斜崩壊危険区域や崖地規制にかかる場合はいろいろな制約がつく事になります。(その他条例などいろいろ規制有)
背後の山や擁壁などから一定の範囲(法らく線:崖地から30度の範囲)をRC造で作らなければならなかったり、基礎を深くする必要が出たり、いろいろ建設コストがかさむ工事の必要が出てくる事があります。これらのコストを予め予測して土地購入費に上乗せして検討しておかないと、建物に掛ける予定だった資金が足りないという事にもなりかねません。注意が必要です。

7.下水道や上水道の経路を確認

都心では滅多にありませんが、少し郊外にいくと(市街化調整区域も)、敷地の面している道路に配水管が埋設されておらず、合併処理浄化槽の設置必要があったり水道管やガス管の引き込みに費用を要したりするケースがあります。
中古の家屋がある場合でも、他人の敷地を介してこれらの配管が敷説されている場合もあり、利用に関して後々トラブルになる可能性もあります。
売買契約を結ぶ際には、重要事項説明書で確認してください。

8.既存家屋について

土地を購入する場合には、中古家屋付きの土地を購入し、しばらく住んでから建て替えるというケースがあります。
土地の性質(風向きや日照条件)等を体感でき建て替えの際に役立ちます。
注意が必要なのは、建て替えの際に解体工事が必要になることと、仮住まいの為の費用も余分にかかることです。
解体の場合は、木造家屋の場合が一番安く約100万円~。
RC造やビルなどの場合はさらに解体費がかさむ事になるので数年間住む事で得られるメリットよりもデメリットのほうが大きくなる場合があります。
また、工事期間中は仮住まいによる家賃が必要になる事や引越し回数が増える事になりますのでご注意下さい。

9.近隣関係や周辺敷地について

建物を建てる場合は、その敷地内で完結させることは珍しく、周辺環境とうまく調和して設計する必要があります。その敷地からの見晴らしや風通し、日照条件なども重要ですが、近隣関係も住む上では非常に重要だと思います。
周辺環境について注意すべきは、隣地が空き地や駐車場、古い家屋が建っている場合です。
数年後には建て替え等で建物が建つことが予想され、しかもどのように建つかが解らない状態で設計を進めなければならないからです。
空き地の見晴らしが良いからといって、そちらに窓を設けたらすぐに家が建って壁が出来てしまい真っ暗になってしまったといっても文句が言えないのです。ですから、隣が空地でもどのような建物が建ちうるか?(2階建てなのか3階建てなのか?)等を考えながら設計する事も必要になります。
敷地を選ぶ際には、周辺に建つ建物を参考に、そこに建つであろう建物をイメージしながら判断するようにしましょう。
そこに見えている姿だけが現実ではないのです。

また、住み始める前から近隣に住む方がどんな方かかは容易に想像できませんが、ゴミ置き場の清潔さやガーデニング等で予想するのも有効かと思います。

10.地盤や水害などの確認

土地の切り盛り建物を建てる上で予算外の費用が発生する可能性が最も高いであろう問題が地盤です。
特に重い建物(RCや高層物件)の場合は、更にシビアとなるので事前の調査を行う事をお勧めします。
具体的には、役所等に赴き建築審査課で周辺地域の地盤データを調べる事が有効です。
しかしながら、その地盤データを見ても見てすぐに解るものではないので専門家に意見を聞く必要があります。また、地盤調査会社に依頼して周辺データを取る事が可能です。相談している建築家等がいれば、データをもらうと良いでしょう。
※傾斜地の場合は必ずしも周辺のデータと一致しない事も多く、どのように切り開かれたかが重要となります。一般的に盛り土なら軟弱、切り土なら良好である場合が多いです。

また、新しい宅地造成地は盛り土をして造成している事が多く、沈下を起こしやすく注意が必要です。(開発で掘った土を敷地外に捨てるとお金がかかる為、盛土にすることが多い)

また、最近の異常気象で年々大雨による浸水や土砂災害のリスクが高まっています。
各都道府県、市町村でハザードマップ(災害危険予測図)等を配布しているので調べてみると良いと思います。
また、地名で水由来の名前がついているところはかつて川や池(またはその周辺等)であったため、地盤や水害のリスクが高い土地である事も多いです。灘・沢・深・川内等の文字が含まれている場合は注意して昔の土地利用図などを確認してみてください。(神社仏閣は水害等のリスクの低い所に建てられている事が多いです。)

11.借地等ではないか?

借地権の譲渡の場合は、中古家屋と一緒に購入する場合がほとんどです。
注意しなければならないのは、毎月土地を利用するための地代が必要なのと、契約している内容以外の土地活用が難しいという事です。
例えば、庭の一部を駐車場として第三者に貸し出す場合は
「無断転借」

当る場合があり、契約の解除を申し付けられる場合があります。(ただし、お客様等に無償で貸す場合はこの限りではありません)

また、建て替えをする場合も非常に厄介で、地主との調整が上手くいかず難航する場合がほとんどです。
今まで木造家屋が建っていた所に鉄骨造やRC造を築造しようとする場合には地主の許可と、相当の保証料等が必要になりますので注意が必要です。

土地を購入するのと違い、借地権(権利)のみの売買なので、その権利の範囲が何処まであるのかを明確に理解する必要があります。

また、新規に地主さんから定期借地権として土地を借りる事も考えられます。
この場合は、土地を購入するよりも安く賃借でき希望の家が建てられるというものです。
しかし、期間が定められているものがほとんどで、
50年後等に土地を更地にして返却する等の条件
がつきます。(建物買取請求権がある場合もあります)
借地期間が満期になった時にどのように過ごすのか?(何歳になっているか?)
キチンと考えておく必要がありそうです。

12.その他土地購入時に注意したい事

土地購入時に注意したい事はここまでに述べてきた事以外にもいろいろあります。
上記のものは基本的に建物が建つのか建たないのか?建築費用以外の予想外の予算を容易する必要のある土地やリスクのあるものをまとめてみました。
しかし、これらが土地探しの全てではありません。
こういったリスクのある土地に住んでいる方も当然多いわけで、技術力等でカバーできる事がほとんどです。

また、土地を購入の際に取り交わされる「重要事項説明書」が非常に重要です。
その土地に対する条件や係ってくる法律・規制。水道管やガス管の埋設状況や道路の状況など事細かに記述されたものです。
この書面の中で、一つでもわからない用語等があれば、キチンと説明を受け契約をすると良いと思います。
消費者(購入者)にとって不利になるかもしれない事はこの書面にて記載し説明する事が多いからです。

土地をお持ちの方が建て替え前に注意する事

相続で引継いだ土地や、購入済みの土地がある場合は、建築以外の費用がどれくらいかかるのか予め検討しておく事が得策です。
上記のような用件に該当していないかを確認すると共に、下記のことに注意してください。

1.今の家よりも小さくなる事がある

法律の改正等で、昔は合法的に建てられた家も今の法律に照らし合わせると違反建築物になっている事も多く、建て替え時には今のような大きさでは建てられない事が多々あります。
一つは道路問題。道路のセットバックの必要や、道路斜線により削り取られ満足に建て替えられないケース。
次に用途変更などで、建蔽率や容積率、日影規制などが変更されている場合です。このケースでは逆に大きく建てられる様になっている事もありますが、周りの建物と見比べて判断すると良いと思います。
その他、地区協定や法律の改定により制約が増えている場合があります。

Information

これが原因で建て替えを諦める方が多いポイントです。
新築そっくりさんのような全面改修を行った方が良い場合があります。

2.生産緑地の場合

新居を建てる予定の土地が農地などの場合は、生産緑地に指定されている場合があります。
この場合は、その指定を解除する事が非常に難しく、すぐに家を建てられるとは限りません。
また、解除に成功した場合でも農地の間に猶予されていた税金の納付が必要になる場合もあるので税理士さんなどに相談して進めるのが良いでしょう

3.市街化調整地域の場合

市街化調整地域内の建築の場合、必ずしも再建築が保証されません。
所轄の都市計画課等と協議の上再建築可能かどうかチェックする事が不可欠です。

4.借地の場合

借地の場合、土地の借主に無断で建て替えする訳にはいきません。
上物がなくなった途端借地権が消滅してしまう事もあるので、事前に協議が必要になります。
新たに保証金が発生したりする可能性がある他、構造様式・規模の変更の場合には契約違反となってしまう場合もあるので注意が必要です。

5.その他

既出の土地購入時の注意点同様に地盤や給排水経路において確認が必要になります。
後から思わぬ支出が増えぬよう予め危険因子は取り除いておきましょう。

土地購入時に便利なHPのご紹介

東日本大震災を受けて住宅地や新築マンション等を購入する際のチェック項目が非常に多くなりました。
この項では建築家が有益と思えるサイトを紹介します。
液状化のリスク判断や津波等の対策。大雨による浸水リスクなどを計る目安となるサイトです。
※いずれも個々の状況によって危険度は変化しますので目安としてご覧ください。

・震災リスクに関するサイト(建物倒壊危険度・火災危険度マップ)

建物倒壊危険度・火災危険度マップ
震災時の建物の倒壊リスクや火災の発生による危険度などが確認できます。

・同上区市町別危険度ランク総括表

東京都内において非常に細かく震災リスクを検証しています。
地震によって起きる火災などに対する危険度等もあわせてご覧いただけます。

・浸水被害リスク(ハザードマップ)・土砂災害、津波や洪水リスクを調査できます

ハザードマップ
全国のさまざまなリスクに対しまとめてあります。震災被害や津波リスク、土砂災害などのリスク判断に有益です。
また、全国の市町村の調査データへのリンクなどもありますのでまずはこのサイトを確認するのがよろしいかと思います。

・地盤の揺れやすさマップ(ビジュアルで解りやすい)

揺れやすさマップ
全国の揺れやすさマップ。震源地から離れた場所で地震による影響の差をビジュアル的にわかりやすく表現しています。
まずはこちらで地震による影響の出やすい地域かどうか確認してみてください。

・液状化予想図(東京都版)

液状化予想図
東京都の液状化リスクマップです。
液状化のしやすさをすう段階に別けて色分けしています。

東京都以外にも各都道府県で液状化マップは用意しているので、
「液状化マップ ○○県」と検索して調べてみてください。

・東京都防災マップ

東京都の避難所等の検索ができます。近隣にどのような避難施設があるか検索するのに有益です。
駅名で簡単に検索できます。

・ボーリングデータ検索(地盤柱状図)①

住宅地盤調査及び地盤補強工事会社のネットワークによる全国の地盤データを提供。一部有料サービスになっています。
※近隣地盤データは不動産屋さんや建築家、ハウスメーカーを介して取ることができますので、相談してみると良いと思います。
また、役所でも近隣の地盤データを保管しているところもありますので確認してみると良いと思います。

・ボーリングデータ検索(地盤柱状図)②

土地購入時のチェックポイントまとめ・不動産屋さんの押し切られないで

土地購入時にすべての項目を自分でチェックするのは難しいものです。
ですが、実際土地探しをしていると時間が足りなくなることが良くあります。
人気が出る土地はすぐに売約予約が多数入り、順位順に判断を迫られることになります。

いざ、土地を買おうと思って気に入った土地が見つかっても判断するまでにはとても時間がないのですよね。
ですから、あらかじめ希望する地域の情報をチェックして気に入る土地が出てくるまでに備えることが重要です。
もちろん、不動産屋さんは購入する段階になったら力を貸してくれるかもしれませんが、それではもう遅いのです。
これは私は声を大にして言いたいポイントで、
「物件情報を見る前に周辺の土地情報・ハザードマップなどの防災情報は事前にチェックしときましょう!」

それと、あまり申し訳にくいことですが、不動産屋さんはやはり商売人です。
売ってしまえば関係もそこまででいかに多くの土地や中高住宅を買ってもらうかです。
商店やスーパーと違って仕入れて在庫がある訳ではなく、仲介という商品を自分が持たずに売るのですから、そのお客さんが買ってくれなくても別のお客さんが買ってくれるからいいやではないのです。
実が自分が仲介したお客さん以外の別の不動産屋さんが連れてきたお客さんが購入してしまうと儲けがなくなってしまうのです。※1
ですから、よっぽど良心的な不動産屋さん(ほぼそんな方はいないと思います)でなければ、その土地のデメリットを売約予約や手付金を払うまでにわざわざ伝えてはくれないのです。
もちろん、契約段階になって”重要事項説明”という書面が交わされますが、それはあくまで事実確認のみで、それがどのようなデメリッットがあるかなどはわからないまま契約となってしまいます。

ですから、自身で予め知識を付けることが重要なのです。
不動産屋さんがどんなに親身に土地売買に付き合ってくれたとしてもそれは土地を売ることに関してだけで、
その土地にどんな建物を建てたいという夢の実現までは担保してくれません。
購入後後悔しないためにも、不動産屋さんにすべてを任せるのではなくご自身で判断できるよう、様々な情報を収集してみてください。

※1:直接仲介の場合は少し事情が変わってくるかもしれません。

※建築情報コーナーの関連記事リストです

  1. 設計事務所・工務店・建築家選びのポイント
  2. 建設用地購入・家屋解体時に注意する事
  3. 建物のボリュームチェック・建築家の裏技
  4. 坪単価のカラクリ・家の安い高い
  5. 中古住宅を購入時の注意事項~建て替え時を視野に入れて
  6. 住宅建築費の実際・ローン試算の手引き
  7. 固定資産税・都市計画税の課税標準額算出法
  8. 設計依頼時の注意点・図面の見方、チェックのポイント
  9. 建築工事全体の流れを解りやすくご紹介・工事監理のチェックポイント
  10. SE工法(金物工法)のメリット・デメリット
  11. IHクッキングヒーターとガスコンロのメリットとデメリット比較
  12. 太陽光発電のメリット・デメリット~補助金利用・償却年数試算方法など
  13. 蓄熱式床暖房のランニングコスト(電気代)公開・温度比較について
  14. 家相で創る幸せな住宅とは?
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  16. 建替え・リフォーム前の耐震診断のススメ

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Last Up Date:09.11.06

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SE工法徹底解説~メリットからデメリットまで

このコーナーでは我が家の躯体にも利用したSE工法の解説をメリットと、デメリット両側面から掘り下げて解説したいと思っています。

Information

こちらは自邸を建築した際のデータをもとに2009年に記載した記事ですが、現在ではSE工法に限らず様々な金物工法が利用可能となっています。
それらの細かい比較はありませんがSE工法と特徴は近いのでSE工法を金物工法と読み替えて差し支えないかと思います

SE工法とは?

SE工法SE工法とはEngineering For Safty(工学的で安全な工法)という意味です。

構造設計の巨匠・幡繁(ばんしげる)氏の協力のもと、阪神大震災で木造家屋が多く倒壊した反省を活かし安全な木造家屋の実現に向け研究し完成しました。
※幡繁氏は国技館やフジテレビ本社屋などの構造設計をした方。

木造家屋の弱点である仕口(接合部)を金物に置き換え、品質の安定しない従来の構造材を使うのではなく、強度の確かめられた構造用集成材を利用し、実験に基づいた構造計計算を行い信頼性を高めた工法です。
構造計算を行い強度を高める事で、一般の軸組み木構造より少ない量の耐力壁で作ることが出来るので、自由度が高く、大空間を作ることもできます。

無印良品の家や難波氏による一連の箱シリーズなどはSE工法で建てられています。

木造家屋が阪神大震災で多く倒壊した理由

まず始めになぜ震災において多くの木造家屋が倒壊したかという事を述べておきます。

日本で一般的な木造住宅は柱の大きさが105mm角のものがほとんど。
最近では120角の木造家屋も出てきましたが、それは基本的に建築基準法の中で柱の細長比という規定があってその基準をクリアしたに過ぎません。

細長比というものは柱の長さを梁や土台間距離に応じて柱の太さを規定するものです。
二階建てぐらいまでであれば105角(3.5寸角)、三階建てでは120角(4寸角)が必要になります。
これは、横架材(梁等)によって柱が拘束(横方向におさえられている)されるので、その周辺では地震などの横揺れに対して柱がポキッと折れにくくなるために柱が細くても良いというものです。

しかし、法律とは、その法の趣旨とは別に、柱の最長比を横架材間の何分の一にする事。と、短い言葉で完結し、その条文だけが意味を成しているといっても過言ではありません。

つまり、曖昧な部分を含み、その趣旨を理解せずに運用すると大変な事になるという事です。
(建築基準法通りに柱の太さを計算すれば安全とは必ずしもいえなくて、それ以外の余条件をキチンと反映した検討をしなければならない)
柱の細長比例えば、大きい吹き抜けがあるような家では吹き抜けに面した柱は拘束力が弱いため、梁のない方向に力が働くととても弱いんですよね。
でも、これでも適法になってしまうんです。
適法は適法でも、実際阪大震災の時はこういう家が多く倒壊したという事実があります。
つまり法に適合=安全な家とは必ずしも言えないのです。また、従来の木造では”仕口”と呼ばれる欠き込みを利用して柱、梁を接合するように組み立てられるのですが・・・
その仕口がウィークポイントになるのです。
特に沢山の梁が接合する柱はあらゆる方向から欠き込まれ、柱がほとんど残っていないという事が良く有ります。

そこが原因で倒壊した家屋も少なくないと聞いています。

そして、材木の強度というのも一定でないので、全く同じ間取りでも、使う材料によっても強度が異なるのです。たまたま悪い材料を使ってしまった建物などでは予定の強度が出ず倒壊に至ったと予想されます。
特に筋交いなどでは、節抜けのした材料(著しく強度の低い木材)を使った家屋や、適切な取り付け方法がなされない事に起因して倒壊した家屋もあったようです。

なぜ、そのような事が起きるのか?
それは、木造家屋の建築確認申請のズサンさがよんだ悲劇とも言いかねません。
建築確認申請では、4号建築物の特例といって一級建築士の設計した木造二階建て(一定規模の)においては、ほとんどの条文のチェックが免除されています。(設計した建築家の責任の下、役所の担当者はチェックしなくて良いことになっている。)

つまり、もし悪意の建築士が契約を優先して構造を無視した間取りを作っても確認申請はおりてしまうのです。
※事実、一部の業者で壁量が不足するなどの偽装があり建てられた家がありました。

また、一級建築士という資格は万全ではありません。
それは、先の元姉歯建築士の耐震偽装にしかり、ただ知識のない者による設計で、見過ごされてしまったケースや、単純な設計ミスなどが耐震性能を充分備えていない家を量産してしまったのではないかと思います。

つまり・・・

1.材木の強度が不安定
2.構造のチェック体制が曖昧
3.法律の曖昧性
4.施工者の技術不足

等に起因され、
不確かな木造住宅が量産され、地震で倒壊
してしまったのではないのかと思うのです。

その反省を活かし、信頼ある木造住宅をいかに構築するか?
そこでSE工法の出番となるわけです・・・

建築基準法は料理で例えるならば、ただ単に必要な材料を示しているだけに過ぎません。
調理においては材料の切り方、炒めるタイミングなども重要になるように、正しい調理法を知っている必要があります。その料理法を誤った建築物の多くが、震災の被害に曝されてしまったのではないでしょうか?

SE工法のメリット

SE工法は、先にも述べたように、構造強度の信頼性が高い点が一番のメリットだと思います。
まず、メリットを列挙させていただくと、

1:裏付のある構造強度
2:自由度の高い間取りが可能
3:特殊な形状への対応が可能
4:品質が高い・保証体勢が磐石

といったところでしょうか。
それでは、それぞれ掘り下げて説明させて頂きます。

木造軸組み構造の弱点である仕口の強化

SE工法金物イメージSE工法はこの図のように仕口(接合部)を金物に置き換えて木造の弱点を補完しています。
木造の通し柱は何方向からも梁が入り込み、接合部分の柱はほとんど残っていません。
しかし、SE工法の場合はその金物が取り付く丸座の部分が少し削られるだけで、柱がキチンと残っている事が解ります。
また、ドリフトピンとよばれる専用の金物を使うことで、梁とも強固に接合されるので半剛接という鉄骨造やRC造と木造の両方の性能を兼ね添えた構造体を実現しています。

注脚部の見直し

SE工法柱脚金物SE工法は柱脚部(柱と土台の緊結部分)も強化を行っています。
仕口の性能を高めた為、高強度の建物を作れるようになり、今まで以上に柱脚に負担がかかるようになりました。
実際、木造家屋のウィークポイントは仕口の次に柱脚の強度不足が指摘されています。
通常、柱は土台を介して基礎に緊結されているのですが、柱からズレタ位置でのみしか留める事が出来ない為弱点となるのです。
(柱芯からズレると、てこの原理で負担が多くなる)
その為、SE工法では柱の直下で金物により接合し、直接基礎に留め付ける工法としています。

基礎の鉄筋の錆防止、強度強化

これはSE工法に限る事ではありませんが、基礎巾を170mmを標準とし、基礎の強化を計っています。
一般的な150mm程度の基礎では、アンカーボルトの被り厚がキチンと確保できないことがほとんどです。
被り厚とは、鉄筋が部位によって3cmとか4cmとかコンクリートに覆われていなければならないという規定です。(基準法の基礎巾の最適準は120mm・ベタ基礎の場合)
コレは酸性の鉄がアルカリ性のコンクリートに覆われている事で酸化を防ぎ錆びるのを防止する為に必要最低限の数値を示したもので、150mm程度では少しのズレでアンカーボルトだけでなく、基礎の鉄筋も被り厚がキチンと確保できなくなることがあります。
また、被り厚が少ないと、その部分が強度的に不足し、クラック(ヒビ)が入り、そこから水がしみこみコンクリートを劣化させます。

材料強度の確保・構造用集成材の利用

SE工法では、一般流通の木材ではなく、構造用集成材を利用する事になっています。
一般の木材では、木の節や曲がった木から製材したものか?などその木それぞれに性能のバラツキがあり、強度の表示がないものがほとんどです。
その為、実験により強度が確認された構造用集成材を使うことで、キチンとした数値での構造計算が可能となり、信頼性を向上しています。

全棟構造計算で検証

通常の木造建築では、壁量計算という簡易計算で構造のチェックが行われます。
地震や台風などの強風に対して、床面積や立面に応じて必要な体力壁の量を算定するやり方です。
しかしながら、建物の形態は一様ではなく、大きな吹き抜けや、スキップフロア、オーバーハングなどのイレギュラーな設計の場合はその基準が曖昧な為に、建築基準法ではカバーしきれていない部分が多くあります。
その為、法に適合しても危険と思われる建物も多く、実際震災により崩壊したという話を聞いています。

SE工法では、材料強度の確認から、実物大実験での検証結果を元に解析されたデータを使い、全棟構造計算を行って、安全性を確認しています。

設計・プランの自由度が高い(スケルトン・インフィル対応)

構造計算をキチンと行う事で、強度を確保しながらも、通常の軸組み構造に比べ壁の量を大分少なくする事ができます。

(軸組み木造の約1/2~1/3)

SE工法耐震等級3

耐震等級3(基準法の1.5倍強度)
での2階建て1階部分の壁配置例

コレは、建物外周部で構造体を成立させ、内部にはほとんど柱・壁が無い(構造上の)の空間を作ることが出来る事に繋がります。
そうやって出来た空間は、何十年後かの改修の時も自由度の高い改修が可能で、建物の寿命を60年やそれ以上と考えても充分対応可能な躯体といえる訳です。
また、長期優良住宅の基準もクリアする事が可能な躯体性能とフレキシビリティーを持ち合わせています。

その他、本来木造家屋に課せられる制約の一つ、壁率比(H12.建告1352号)の規定を計算によって免除できる為、片面に大きな開口部がある建物などにとても有効です。
例えば、一階の一部を駐車場にするケースなどは、通常の木造では成立しにくいのですが(こういった家は特に震災の被害が多かった)、構造計算で安全性が確かめられる為有効です。

オーバーハングのイメージまた、私の自邸のようなケースではオーバーハングという二階が迫り出した平面の為、従来の木軸構造では実現困難でした。
SE工法では1500mmまでであれば可能となり、プランの自由度が広がります。火打ちが省略可能その他、右の写真のような小屋裏を利用した吹き抜け空間も本来必要である火打ちや小屋組みを設けることなく勾配天井を造る事が出来ます。

SE工法の場合は、勾配のついた登り梁も金物で緊結する事が出来るので、一定勾配以上は構造に加味できない部分をも計算に加える事が出来、火打ち材などがなくても安全なのです。
(先に触れた4号建築物<構造計算免除>の場合は正しい知識無しで、裏付けなく火打ちを入れてないケースもあります。コレでは、耐力壁の力が正しく建物全体にいき渡らない為に危険である場合があります。)

柱・梁の現し仕上げにも適している

金物工法梁現しのイメージSE工法は現し仕上げに適していると思います。
現し仕上げとは、構造躯体の柱や梁を剥き出しで見せる工法で、その接合部が実にシンプルで見た目が良いからです。

SE工法の接合部

SE工法の接合部

軸組み構造の接合部

軸組み構造の接合部

一般の軸組み構造では、接合部には金物がむき出しになりとても見苦しいのですが、SE工法の場合は柱や梁から飛び出る金物がない為に非常にスッキリしています。コレは他の金物工法で比べた場合でも言える事で、大空間に同じリズムで梁を現しにし見せる事で独特な空間を作り出すことが出来ます。

品質が高い・保証体制が磐石

建築基準法より細かい規定が設けられており、それに即した検査体制が整っています。
また、工務店の研修制度など質の高い物造りの体勢が出来ています。
工務店側の検査・検査機関の検査・設計者の検査と重ねて行う事でコレまでの瑕疵による事故がなく、保証会社の保険料が格安となっています。

SE工法のデメリット

特にSE工法のみをひいきするつもりはありませんので、デメリットについてもキチンと言及いたします。SE工法を採用する場合はきちんとその弱点を把握する事が重要で、SE工法のみを設計する設計事務所や工務店ではいい事ばかりを並べキチンと説明してくれない事もあるので参考にしてみてください。

あまり、デメリットばかりを書くとイロイロな方にご迷惑を掛けてしまうかもしれませんが、コレはあくまで私の意見として読み飛ばしてください・・・

メリットを尊重した上で
、こういったデメリットもありますよという趣旨の記事です

最大のデメリットは躯体コストが高い事

やはり、一番のデメリットは構造体のコストが高い事です。
販売元のNCNの資料によると躯体工事費の費用が2~3万円/坪アップと公表されています。
これは、30坪程度の住宅ですと60~90万円の増額になるという計算になります。
100万円UPぐらいで納まればいいのかな?と思う方もいるかと思うのですが・・・
しかし、この計算の根拠となる躯体工事費が在来工法では4万円/坪、SE工法では6~7万円/坪と提示されていますが、実際には建物によって随分と差が出るので注意が必要です。
ここで、参考までに自邸のコストで検証してみます。
また、各工法の建て方風景もblogでレポートしています。下記のリンクよりご覧下さい。

Akatuki House A(親世帯)- 木造在来工法
述床面積:80.18㎡(24.25坪)
施工床面積:91.79㎡(27.76坪)
 ※テラス・小屋裏収納の1/2床面積を加算

躯体・金物費合計:1,265,100円
 〃 延床面積辺りの坪単価:5.22万円/坪
 〃 施工面積辺りの坪単価:4.56万円/坪

土台:米ヒバ乾燥材
柱:ヒノキ乾燥材
梁:米松乾燥材
耐震等級:3(最高グレード)
※一般の建物より階高が高い為割高です

Akatuki House B(子世帯)- SE工法
述床面積:99.41㎡(30.07坪)
施工床面積:108.34㎡(32.77坪)
 ※テラス・小屋裏収納の1/2床面積を加算

躯体・金物・SE工法使用費合計:
2,313,230円
 〃 延べ床面積辺りの坪単価:7.69万円/坪
 〃 施工面積辺りの坪単価:7.09万円/坪

土台:ヒバ
柱:構造用集成材
梁:構造用集成材
耐震等級3(最高グレード)
※一般の建物より階高が高い為割高です

面積・高さが違うので簡単に比較できませんが、コストの差をイメージできたかと思います。
しかし、コストの差はコレだけではないのです・・・

荷姿が悪く輸送コストが掛かる

金物工法荷姿実はSE工法は荷姿(トラックに積む際のが悪いので運搬費が在来工法の約倍の費用がかかり10万円ほどアップしていました。
それは、プレカット工場で金物を取り付けるが故に、トラックの荷台に整然と並べることが出来ず、カサが増えて一度に多くの材料を運ぶ事が出来ない為です。
予め、躯体に金物を取り付けているのでその分、建て方費(躯体の組み立て費)がその分安くなっているかな?と思いましたが、あまり差は見られませんでした。

構造外の材料費も少しアップ

少ない構造体でスッキリと建てることが出来るのがSE工法の特徴です。
しかし、それゆえに建物外周部などに外壁の下地等を止めつける為の間柱等が在来工法より多く必要になります。
価格的にはそれほど多く在りませんが、自邸の場合見積書の単価を比較すると2000円/㎡増額となっています。
(同一工務店で同時期の施工の為、信憑性のあるデータかと思います)
しかし、30坪の住宅では20万円のアップとなり塵も積もれば結構な額ですよね・・・

基礎工事費もアップします・・・

増額の話しばかりですが、それぞれ個別に解説させて頂きます。
SE工法の場合、柱脚の信頼性を増す為に、一般的な基礎より強固な基礎にする事が要求されます。
具体的には基礎巾を170mm以上にして鉄筋を守り、ベタ基礎にして基礎と一体的な構造計算を行う必要があるのです。
その為、二階建て程度の建物では通常の在来工法に比べるとスペックが高く費用がかさむ事になります。
私の自邸の場合は、地盤が悪い事もあり、初めからスペックの高い基礎とする事にしていたので、在来工法も割高な基礎となっています。

Akatuki House A(親世帯)- 木造在来工法
1階床面積:43.62㎡(13.20坪)

基礎鉄筋・コンクリート費合計:1,041,500円
 〃 1階面積辺りの坪単価:7.89万円/坪
 〃 施工面積辺りの坪単価:3.75万円/坪

Akatuki House B(親世帯)- SE工法
1階床面積:46.29㎡(14.00坪)

基礎鉄筋・コンクリート費合計:1,112,050円
 〃 1階面積辺りの坪単価:7.94万円/坪
 〃 施工面積辺りの坪単価:3.39万円/坪

その為、このようにSE工法も在来工法もほとんど差がありませんが、一般的な立ち上がり巾150mmで布基礎の建物と比べると20万円ぐらいは増額になると思われます。

集成材の安全性・実績の不確かさ

集成材イメージこれは、SE工法に限らず、様々な事にいえるのですが実績が少ないということは一番の不安材料になります。
構造計算する為に、強度の安定した構造用集成材を使うわけですが、その構造材の安全性に私は少し疑問を持っています。
構造用集成材はラミナと呼ばれる薄い木材をはぎ合わせたもの。木は木目によって強度にバラツキがあるので、相互に組み合わせながら弱点を補強しあって、強度を強めています。
しかしながら、そのラミナを組み合わせる為に利用する接着剤の強度が少々不安なのですね。
高分子の世界はそれほど歴史が深くはないので、住宅のスパンで50年100年と経過した場合、はたしてその接着剤が当初の強度をキチンと確保するかは疑問な所があります。

ビニール製品などで考えると、紫外線に弱く長期間晒されるとボロボロになりまりますよね。
どんなに強い接着剤でも時間が経過するとポロッと落ちてしまったり・・・

それは、やはり経年劣化、特に紫外線の影響が大きいと考えられます。
ですから、構造用集成材を表し仕上げに使う時は注意が必要だと考えます。
毎日、西日に照らされるような場所への使用はちょっと抵抗があります。

また、表し仕上げの場合、見た目を重視する為に防腐剤の入っていない接着剤を使用するので、防腐に対しても将来の不安が残ります。

※1893年に考案された集成材ですが、1927年コペンハーゲン駅舎で使われ今も同じような姿で使用されています。
これは、有識者の中でも意見が分かれるところなので、リスクがあるという事でご理解下さい。
また、数年前に構造用集成材が剥離したという事故があり、その原因追求等が行われています。

シックハウス問題は少しリスクあり

シックハウス問題を考える時に誤解していけないのは、一つの判断材料になるホルムアルデヒド等の発散量を示すF☆☆☆☆やF☆☆☆の表示の意味。
F☆☆☆☆と規制対象外材を混同している方がいるかもしれませんが、F☆☆☆☆は使用範囲を制限されませんが、全く発散しないわけではありません。
発散量が少ないだけで、完全に安全というわけではないのです。
SE工法の材料もF☆☆☆☆を利用し、シックハウス問題に真剣に取り組んではいますが、集成材を利用したSE工法では、通常の在来工法より化学揮発物質を多く発散する事になります。

構造計算費用も別途必要に

コレもコストに関わる事ですが、安全な住宅を作るために全棟構造計算をするSE工法では、構造計算の費用が必要になります。
構造によっても変りますが、2000円~3000円/㎡
30坪の住宅ですと20~30万円となります。
これは、通常の構造計算費用に比べたら割安なのですが、構造計算をしない場合と比べたらやはり、増額となります。

工務店経費(見えない経費)も加算

SE工法は登録施工店制度となっている為に、上納金ではありませんが工務店は固定費を販売元に支払わなければなりません。

仮にその経費を100万円とした場合、年間10棟建築する工務店では一棟辺り10万円の経費を計上せざるを得ません。
これは、SE工法に限らず登録施工店制度をとっている工法全てにいえることなので特別な事ではないのかもしれません。
例えばハウスメーカーなどのは研究開発費、本社経費として10%以上の経費が掛かっています。
この経費を外部に委託し負担していると考えれば納得のいく話しなのですが、規模によってはコレだけの費用を掛けるメリットがなく、SE工法によらない工事を依頼する場合、余分な経費を支払わなければならない事に繋がると言えます。

在来工法が必ずしも信頼性がないわけではない

SE工法のデメリットとして掲げる話ではないのかもしれませんが・・・
SE工法の謳い文句の中では軸組み在来木造より優れているという事が謳われていますが・・・
必ずしもそうではないと思うのです。

震災により多くの在来木造が倒壊しましたが、それは過去の基準・施工法によるもので、最近の軸組み在来木造でも、耐震性能の高い建物は作る事が出来ます。
しかし、木造家屋が多く倒壊したというイメージだけが先行し、軸組み工法だから不安だと思う事はあまり懸命ではありません。
弱点であるといわれる仕口も欠き込みが少なくても大丈夫なような金物もあり、柱脚や筋交いに関しても弱点を補強しながら建てる工法が研究されています。

構造計算をしない在来工法では、壁の強さが建築基準法で決まっていますが、実際それ以上の強度が出ている場合があります。
しかし、SE工法は実験に基づいた最大の値を元に計算している為、逆に余裕がない場合も考えられます。
例えば、壁に構造用合板を貼る場合、基準法では5倍までですが、SE工法では7倍やそれ以上の耐力を見込むことが出来ます。
この事は逆に在来工法のほうが余力が残っていると考えられるわけです・・・

こう、考え方を変えて調査するといろんな事が見え、特定の工法を評価する事は非常に難しいのです。

後からコストダウンが容易にできない

コストがいろいろ掛かるSE工法ですが、一番気をつけなければならないのは特殊な工法の為、計画段階で構造計算の費用などが発生し、後から減額しようと思ってもそれらの費用を取り返せない事。
また、在来工法に途中から変えようと思っても簡単には変更できず、計画を1からスタートせざるを得ない事が挙げられます。
SE工法に限らず、途中で構造を変える事は、図面を全て書き換えるような大変更になります。
ですから、始めの工法の選択が非常に重要となります。

SE工法まとめ

このようにデメリットを挙げてみるとコストアップする要因がかなり多くあり、その費用を理解した上で計画をスタートせねば大変な事になります。
私がピックアップした項目でざっと100~150万円以上在来工法に比べて増額します。
これは、税抜き前の工事単価なので、コレに工務店の諸経費、消費税がかかる事を加味すると120~170万円以上はトータルで増えると覚悟して下さい。
※自邸(住宅密集地の最も条件の悪いケース)をベースに試算したものです。

そう考えた時に、2000万円ぐらいの工事では、SE工法の費用が非常に大きなウェイトを占める事になり、他の工事を圧迫すると簡単に予想できます。
少なくとも2500万円以上、理想を言えば3000万円以上の工事を予定している場合はSE工法での計画を検討に入れると良いと思います。


コストの話だけで言うとデメリットだらけのSE工法ですが、もう一度メリットに話を戻すと、やはり、在来工法に比べ大空間が出来、自由度の高いプランニングは魅力があります。

その高いコストを払っても変えがたいメリットは多大にあり、お勧めに値するわけです。

しかしながら、お施主様の希望する間取りによってはSE工法とせずとも、建築家の工夫によって在来工法でも実現可能なこともあり、SE工法ありきで計画をスタートする事はちょっとお勧めできません。

ご予算やご要望、包み隠さず話した上で、間取りから工法を選択することをお勧めします。

ここで、簡単な言葉でSE工法を示すとすればワンボックスカーというところでしょうか。
一般的な木造住宅がセダン、ローコスト住宅を軽自動車だとすると、それより大きな空間を持った車だけに当然高いわけです。
セダンを買ってオプションをアレコレつけても、そのワンボックスカーの空間は手に入れることが出来ませんよね。
でも、セダンでも使い方によっては快適だし、その分予算内でカーナビをつけたりいろいろグレードアップできるわけです。
軽自動車は安いけれども、馬力が出ないなどのベースの性能が制限されますが、用途によっては快適に乗る事が出来ます。

もちろん、ワンボックスカーを買ってオプションまでつける余裕があればそうすれば良いし、始めはオプション無しでシンプルに使って、後からオプションを買ってグレードアップする方が良い場合があります。

家造りも、車の購入と同じ所があり、家族の構成や目的によって選ぶべきで、ワンボックスカーを買った後にお金が無くなってしまったので、オプションがつけられず、セダンに買い換えようと思っても簡単にはいかないですよね。
工法を選択すると言う事はそういう事なんです。

そして、工法は木造在来工法、SE工法だけではないので様々な選択肢の中からご自身のライフスタイルに合う建物を手に入れてください。
※RC造・S造などの工法の特色も順次UPしたいと思っています。
※建築情報コーナーの関連記事リストです

  1. 設計事務所・工務店・建築家選びのポイント
  2. 建設用地購入・家屋解体時に注意する事
  3. 建物のボリュームチェック・建築家の裏技
  4. 坪単価のカラクリ・家の安い高い
  5. 中古住宅を購入時の注意事項~建て替え時を視野に入れて
  6. 住宅建築費の実際・ローン試算の手引き
  7. 固定資産税・都市計画税の課税標準額算出法
  8. 設計依頼時の注意点・図面の見方、チェックのポイント
  9. 建築工事全体の流れを解りやすくご紹介・工事監理のチェックポイント
  10. SE工法(金物工法)のメリット・デメリット
  11. IHクッキングヒーターとガスコンロのメリットとデメリット比較
  12. 太陽光発電のメリット・デメリット~補助金利用・償却年数試算方法など
  13. 蓄熱式床暖房のランニングコスト(電気代)公開・温度比較について
  14. 家相で創る幸せな住宅とは?
  15. 新築でも結露する~結露対策はどこまで行う?
  16. 建替え・リフォーム前の耐震診断のススメ

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