[toc heading_levels=”2,3″]
地盤調査の重要性
建築の工事の前に行う工事でとても重要なのはこの地盤調査です。
建物には当然のことながら重さがあり、その建物の荷重に地盤が耐えられるかのチェックがこの地盤調査となります。
一般的な土地では敷地内でほぼ均等な強度なのですが、まれに地盤の強さにも傾きがあり、敷地全体を調べる必要があります。
特に傾斜地や、昔川だった土地の付近などは盛土や切土等によって地盤強度のばらつきが大きい場合が多いので要注意です。
この調査を怠ると、
①不同沈下:建物が偏って沈み斜めになる事
や
②圧密沈下:建物全体が大きく沈み込む事
等が起き、生活に支障が出てしまいます。
これらは、地盤調査を行う前に、周辺のボーリングデータ等の地盤データを採取して大まかに予想することは可能ですが、最終的には建設地できちんと行うべきことだと思います。
特に、住宅密集地などでは家屋がある状態だと調査が困難だったりして、解体後の調査が必要となります。
その後、予想外の地盤改良の必要性が出たりすると家がないのに建築費が足りないといった問題が発生するので事前の予想も重要になります。
また、建てる建物の構造種別や、使用する仕上げ材料、地盤改良する場合に採用する工法によっても採用すべき調査方法が変わってきます。
ボーリング標準貫入試験のチェックポイント
地盤の強度の基準となるのがこのボーリング標準貫入試験。
他の地盤調査もこのボーリング試験の計測結果に換算してどれくらいの強度があるか?といった数値をはじき出す為、指標となる試験です。
しかし、このようにやぐらを組んだり、重機の搬入や時間とお金がかかるため住宅ではあまり採用されません。
コンクリート造などの重い建物や、表層では持ちそうにない緩い地盤等ではこちらの調査が必須となる場合があります。
マンションや、橋などの大型物件でも採用される調査ですので一番信頼度の高い調査方法です。
ボーリング標準貫入試験(ボーリング調査)とはこの63.5㎏の重りを75cmの高さから落として杭(サンプラー)を30cm貫入させるのに要した回数をN値と呼び強度の基準値としたものです。
ですので、調査は実にアナログで人の手で行われます。
重りは紐で引っ張り上げ、ちょうど75cm持ち上げたら磁石が離れるようになっていてドスンと打ち付けるのです。
言葉で書くと簡単ですが、軟弱地盤では重りを落としてしまうと一気に1m以上沈んでしまい、その後の調査が不明確となってしまいます。
その為、地盤の状況を見極めながら調査を行います。
自沈層がある場合は、沈み込むのに要した時間を計測します。
精度が高い試験といいましたが、軟弱地盤では正確な強度を計る事が出来ない弱点があります。
また、調査は1mの内30cmしか計測していないために70%のデータを無視しているという考え方もあり万全ではありません。
少し前にマンションの地盤調査データのねつ造問題がありましたが、このように実にアナログな調査で、調査員のミスによっても数値が異なることもあります。
最近では、やぐらも不要の機械化されたボーリング調査も開発されたようですが、熟練した職人の勘も重要だと思うだけに悩ましい問題です。
地下水位測定
調査の過程で地下水位を計測します。
これは地下室や、RCの建物の地下ピットの施工などの際の参考にします。
また、調査と並行して地下の土のサンプルを採取します。
これらは地層を判断するとともに、土の強さを計測するために利用します。
孔内載荷試験
また、ボーリング調査の穴を利用して孔内載荷試験を行う事があります。
これは横方向の地盤強度を計測するための試験。
試験棒を杭の穴に落として圧力をかけて数値を計測します。
杭や柱状改良を行う際にデータを利用します。
スウェーデン式・サウンディング試験のチェックポイント
住宅の規模ですとこのスウェーデン式サウンディング試験を採用することが多いです。
これは比較的軽い建物(主に木造住宅)の敷地で採用されるのですが、4~5か所の調査を簡単に行えて安価なのが特徴です。
また、ボーリング調査を行った敷地でもスウェーデン式サウンディング試験と併用することもあります。
こちらは打ちつけるのではなく、スクリューをねじった回数で強度を確認する方法です。
ロッドに5~100kgの錘を載せて調査しますが、最近は全自動式の物も多いです。
調査は10mまでしか行えませんが、木造住宅であればこれで十分なことがほとんどです。
スクリューを回転させながら計測し、土質のサンプルを採取します。
土質が細かく把握できるのはメリットですね。
ここまできちんとサンプリングしてくれると細かい単位で地盤の強度が把握できるので良いです。
調査も数時間で済み、ほとんど騒音もないのもメリットです。
その他地盤調査・液状化試験
その他、平板載荷試験といって基礎に見立てた鉄の板を置き、実際の荷重かけて強度を計る方法があります。
また、ボーリング調査を自動的に行う機械も開発され、日々発展しています。
もう一つ重要な試験に液状化判定があります。
これは東日本大震災で被害が多数発生して注目された試験。
調査方法は様々で、机上調査や土質サンプルから土の粒度試験を行い判定を行ったりします。
しかし、悩ましいのはその結果。
海岸部などではおそらくほとんどが「液状化の恐れあり」との結果が出るものと思っています。
問題はその結果を踏まえてどうするか?
その手段がないまま調査のみを行うと不安材料だけが増えて良くないと考えています。
最終的には構造設計者の判断によるところが大きい地盤調査。
どのような補強や対策を行うか、行えるか?を踏まえ調査方法を選定することが重要です。
地盤調査のまとめ
ここで、調査のデータの解説もしようと思いましたが、基本的に実際の工事段階にはハウスメーカーの営業マンなり、建築家なりからきちんと説明があると思います。
また、調査報告書が作成されそこにどのような地盤かの考察も記載があると思うので割愛します。
ひとつ覚えておいていただきたいのですが、これらの調査結果も「予想」で実際の地盤の事は完全には解りません。
工事を進めたら、大量のガラが見つかったり昔の防空壕や巨大な岩盤が見つかったりと予想外の事が起きる事があります。
また、地盤改良が必要だと判断された場合でも、地盤保証会社の判断によっては改良なしで保証を受けられるという事もあります。
※だからといって安全とも限りません
ですので、極端にデータの悪い箇所があったり、不安なことがあれば説明を求めて曖昧なままにしておかないことが重要です。
そして、
報告書等には記載がない場合が多く、危険なのは大きな木の伐根の跡や、家屋の解体によって生じた穴です。
土を掘ると基本的に緩くなります。
地盤調査では強固だった地盤もその後の解体等で生じた緩い地盤を見逃したまま工事を行ってしまう事のないように注意が必要です。
もし、そういった事があれば特に注意して現場を見てみてください。
※この記事は工事監理の一部を掘り下げて記載したものです
工事の全体の様子はこちらの「工事監理のチェックポイント」の記事をご覧ください。
この記事へのコメントはありません。