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住宅資金について~建設資金・住宅ローンシュミレーション・事業試算書を作成しよう
私が自宅を建てようと思った時に一番困るのが、一体いくらあれば理想の家が建てられるかという事がすぐに解らない事です。
建築費用は非常に多くの要素が影響を与え決まってきますので、一言でこの様な家ならいくらとお伝えする事が出来ません。
カタログショッピングとは違い、建築家の図面を元に面積や数量などを拾い出して見積もりを行い、始めて金額が解るのです。
しかし、平面計画や、面積などがわからない時点では建設費が全く検討を付かないという事では、資金計画が立たず困ってしまいます。
そこで、まず逆に幾らお金を掛けられるか?という事から建築費用をたどってみる事にします。
基本的には、自己資金のみで建築できる人は稀で、ほとんどの方が住宅ローンを組むことになると思います。
住宅ローンは借りたい額が幾らでも借りれられるという事はなく、ある程度の制約がつきます。
年収からローン上減額が決まる
年収に応じて収入に対しローンの割合の上限が定められています。
主要金融機関やFLAT35の場合は35%(H21.08時点)であり、
コレは年収600万円の場合、月々のローン返済額が600/12*0.35=17.5万円を越えてローンを組むことが出来ない事を指します。
つまり、コレにより必然的に建築に掛けられるお金が決まってくるという事です。
各金融機関のHP(住宅ローンのページ)において簡単に試算ができるようになっています。
まずはメインバンクのHPで試算してみてください。
建築費用からローン上減額が決まる
金融機関は住宅取得にかかわる金額を全て貸してくれるというわけではありません。
コレは、万一債務不履行となった場合に銀行が抵当に入れた物件を売却するのに建築費以上の値段で売る事が出来ないからです。
そのリスクを軽減する為にも住宅取得資金(建築費+設計料等)の90~100%までしかローンを組むことが出来ないのです。(一昔前は80%まででしたがここ最近100%まで貸してくれる所も出てきました)
それなので、10~0%+諸経費(引越し費用や手続き費用など)分は自己資金として用意しなければなりません。
※FLAT35でも100%までの借り入れが可能になった模様です。詳細は銀行にお尋ね下さい。
用意できる自己資金はいくらかを確認
建築にかかわる金額全てをローンでまかなう事が出来ないのはご理解いただけたと思いますが、新居を構えるときに自己資金があまりないということも良くあります。
それは生活の変化の中で(子供が産まれるから、子供が独立したから)、湧いて出た問題をカバーするために急に計画を思い立つ場合や、住宅を立てるための土地購入に資金を回してしまい充分に頭金が残っていない場合などが考えられます。
財形貯蓄などで定期的に積み立て新居を構える人のほうが割合的に少ないのではないでしょうか?
その場合、大抵の場合は親族(両親)に住宅資金を援助してもらうケースが多く見受けられます。
この時注意しなければいけないのが、その資金援助が税法上の「贈与」に当るかどうかという事です。
贈与税を払わなければならない場合は、金額にもよりますが10~50%の贈与税が課税される事になります。
年間110万円までは贈与税が非課税の為計算を簡単には示せませんが、仮に1000万円の資金援助を受けた場合は
(贈与額1000万円-無課税分110万円)×税率40%-控除額:125万円=231万円
となり、多額の贈与税を支払わなければならなくなります。
ここで、注目すべきは住宅取得に関する贈与税の特例です。
非課税分の110万円を5年分まとめて恩恵を受けられというもので、最大550万円まで贈与税が非課税になるというものです。
しかしながらこの政策は平成21年度8月時点では廃止されています。
それに変り、21年1月1日に遡り、22年12月31日までの時限措置として500万円+110万円の610万円の贈与税の非課税措置が取られる事が平成21年の経済危機対策で決定してます。
他の節税対策としては相続時精算制度がございます。
コレは、本来相続時に貰い受けるだろう財産を前倒しして受け取り、贈与時には無税となる制度。
実際に相続を受ける時に、相続税が必要であれば徴収されるし、必要のない場合は非課税となる制度です。
住宅取得のケースは一定の条件がありますが、最大3500万円まで一時的に税金を免れる事が出来ます。(22年12月31日までの時限措置では4000万円まで)
親から貰い受ける資産が、相続税が発生するほどでもないよと思う方はこの制度で問題ないのですが、一旦この制度を利用すると年間110万円までの贈与税の非課税制度が受けられなくなるほか、今後の税制改革で贈与税の徴収の仕方が変った時に、思わぬ税金を払わなくてはならない事が出てくるかもしれませんので慎重に判断すべきでしょう。
(H21.08現在では相続する人数で控除額が決まりますが、一個人が受け取る相続に応じて税金が決まる可能性がある。)
詳しくは国税庁のHPに出てますのでそちらをご覧下さい。
※税制は特に変化が激しくシビアな問題なので、この記事に書いている事で全てカバーしきれていないことが多いと思います。最終的には所轄の税務署に問い合わせを必ず行ってください。
建築後に必要となるお金、無理のないローン
手持ちの財産を全て住宅に注ぎ込む事のないよう余裕を持った資金計画を立てましょう。
まずは、当面の生活を考え子供の学費や養育費、旅行や車などの趣味やレジャーの費用などまとまったお金がどの程度必要かを把握する必要があります。
また、建築後にはマンションなら管理費や共益費、戸建の場合は
後々のメンテナンス費用などを考慮する必要があります。
始めはこれらを全て把握する事は出来ないので、なるべく無理のない返済計画の範囲で、余裕を見てローンを組むと良いと思います。
後からローン額を増やそうと思うと審査が大変ですが、減らす分には再審査の必要がないからです。
建築以外にかかる費用
新築時・入居時に建築以外にかかる費用も忘れてはいけません。
引越しの費用や仮住まいの家賃、税金やカーテンや家電製品など、新居に合わせて購入する為の費用です。
ローンを組むにあたり火災保険への加入が必須となり、その費用や抵当権を設定するための登記費用、表示保存登記にも費用が必要となります。
表示登記・保存登記は時間に余裕のある方であれば自分で申請することも可能です。
ただし、建売業者や一部の工務店では提携販売代理店から利益を得るために、自己での登記や火災保険の加入を認めてくれない場合があります。
(私の経験上、銀行等から勧められる火災保険は割高な場合が多いです。NET等でご自身で加入した方が安く抑えることが出来ます。)
別途工事・建築付帯工事
一重に建築費いくらといっても案外費用に含まれていないものがあります。
特にハウスメーカーなどの場合は、屋外給排水工事費や空調設備費(エアコン)等が本体工事に含まれてない事も多く見受けられます。
また、当然の事ながら外構や解体にもお金が掛かるので予算を見ておく必要があります。
注意が必要なのが、地盤や水道の接続状況です。
全ての予算調整をして契約し、いざ解体して後戻りできない状況で地盤が悪い事が解り、後から多額の地盤改良費を請求されえてというケースもあるからです。
予防措置として、予め近隣の地盤データをチェックしてみる(管轄の役所でもデータを閲覧できます)事が必要ですが、建物を解体する前にも調査することが可能な場合があります。
しかし、地盤の状況は敷地内でも一様でないので、建物を実際建てる場所で調査を行うのが好ましくベターです。専門家の意見を聞き、どれだけのリスクがあるか予め判断したほうが良いでしょう。
今まで住宅が建っていなかったような土地は、別途水道の引き込み費や合併処理浄化槽等が必要になる場合があります。
また、今まで使っていた水道管では水圧が低く交換を必要としたりする場合もあります。
水道局などで調べる事もできますが、間違いのないよう予め調査するよう依頼しましょう。
さらに、地中障害物や電波障害、近隣対策費等工事が始まってみないと解らない追加の費用もあります。また、埋蔵文化財の指定地域などでは遺跡が出てきて工事が半年以上中断なんて事も。
と、不安にさせるような事例ばかりですがもちろんそれらが全て当てはまるわけではありません。
予測できる事と予測できない事がある中で、通常であれば建築家やハウスメーカーの担当者が判断してくれると思います。
ですが、中にはこれ以上予算が膨らむと契約してもらえないと思いリスクを正しく伝えない場合もあるのではと思います。(本当に極わずかの可能性ですが)
何社かに意見を聞ける状況であればいろいろな意見を聞くことが一番です。他に追加工事が出そうかどうか?突っ込んで聞いてみると良いと思います。
でも、本当に予想外の事もありますので難しい所なんですけどね。
建築本体工事
同じものが二つとない住宅において価格を指標化するのがとても困難です。
単純な形であれば安く、複雑な形であれば高くなります。構造によっても高い安いがあり、材料や細かいディテールによっても価格は変動します。
また、敷地の状況で道路が狭いと大型の工事車両が入れず割高になり、更に狭いと手運びで材料を運搬するために高くなり、コンクリートを打設するのにもポンプ車が使えずに大変な工事となります。
しかし、道路がひろれば良いという訳ではありません。幹線道路などでは日中の工事を制限されたり、歩道の復旧工事を強いられたりと予定外の工事が発生する事もあるからです。
また、防火規制などで、ガラスや壁、屋根を耐火性を持たせなければいけない事など様々な要因によって住宅の価格は決定されます。
よく、「建築の坪単価は幾ら?」
という議論がされますが、その坪単価の割り出し方の共通ルールはなく各社バラバラなんです。屋外給排水工事費が含まれていなかったり、照明器具や空調機器代が含まれていないなど坪単価だけで高い安いを決めるのは適切ではありません。
さらに、この基準となる面積(坪)も、共通でないのです。
通常、建築費を建坪(延べ床面積)で割ったのが坪単価となるわけですが、施工床という独自の基準で建築費を割って坪単価を示す場合がほとんどです。
困った事に、この施工床という言葉は建築基準法などに定めがなく共通言語として利用するに曖昧すぎるところが問題です。
延べ床面積に小屋裏階や吹き抜け、テラスや屋上利用部分などの1/2の面積を加算した面積を施工床と呼ぶことが多いかと思います。
ただし、これらの面積を加えれば加えるほど、坪単価は小さく割安に映る事になります。
競合他社の建物の金額を比較する際には、同じ建物でないので坪単価が判断の指標の一つになります。ですが、このようにテラスや小屋裏といった面積の多いほうが坪単価は安く映ることになるので注意が必要です。
つまり、建築費が安いか高いかは坪単価で判断するのではなく、その建物自身幾ら払う価値があるかを見定める必要があります。
同じ間取りでも、断熱性能や耐火・耐震性能はもちろん仕上がりの状態も違うのです。
住宅の価格見定めるという事は本当に難しい事なのです。
そこで、図面がない状態で建築費を予測するツールとして住宅金融支援機構・FLAT35(旧住宅金融公庫)の調査を参考にすると良いと思います。
地域 | 住宅面積(㎡) | 敷地面積(㎡) | 建設費(万円) | 坪単価(万円/坪) |
---|---|---|---|---|
全国 | 138.3 | 237.0 | 2,965.7 | 70.9 |
首都圏 | 133.6 | 176.0 | 3,217.5 | 77.4 |
近畿圏 | 140.2 | 195.0 | 3,126.3 | 73.7 |
東海圏 | 144.3 | 251.6 | 3,115.9 | 71.4 |
その他地域 | 139.1 | 295.0 | 2,725.0 | 64.8 |
東京都 | 130.6 | — | 3,566.0 | 90.3 |
東京都2016 | 126.5 | — | 3,934.0 | 102.8 |
※東京都の2016年データのみ更新しましたが土地別の注文住宅の平均坪単価は102.8万円/坪と上昇してました
この調査結果を見ると、各地域での平均坪単価を見ることが出来ます。
全国平均では70.9万円/坪ですが、東京では施工単価が約90万円/坪となっている事がわかります。
コレは述床辺りの坪単価なので若干高めになっているのと、フラット35で融資を受ける場合は一定の技術基準に従わなければいけないため、性能の高い住宅でのケースである事を補足しておきます。
施工床で床面積を考えた場合、
ローコスト仕様で65万円/坪~
スタンダード仕様で80万円/坪~
ハイグレード仕様で100万円/坪~
ぐらいの費用を予め計上することが望まれます。
※照明設備や空調・屋外給排水などを含んだ工事費
某ハウスメーカー(Tホーム)では25.8万円/坪という話を聞きますが(この場合施工床はテラスや吹き抜けの面積丸々加算)、付帯工事費の屋外給排水工事費などを含めると40万円/坪以上になるそうです。(オプションは別)
それでも、充分安いと思いますが、さすがにこの金額では建築家は住宅を設計する事が出来ません。
ちなみに、ハウスメーカーが建築本体価格65万円/坪のように謳っている住宅もオプションや照明・空調設備等を含むと80万円/坪ぐらいになる事も多いので、比べる基準が一本化されない施工坪当たりの工事費で比較するのは注意が必要です。
2010年の統計データをもとに記事を書いていたので、2016年度のデータを見る限り+10万円/坪を見込んだ方が良いかもしれません
記事の更新が追い付かずすみません。
ではいったい幾ら建築に必要なの?
さて、ここまでの話をまとめても一体建設費に幾ら必要なのかわかったようで解らない。そんな状況ではないかと思います。そこで、私のほうで予めエクセルにある程度データを入力した試算表を作成しましたのでご紹介します。
まず、年収と借り入れ金額、期間、ローン金利を入力していただけると月当たりの返済額が表示されます。(元利金等返済の場合)この時、収入に対するローンの比率が35%以上になっていないか自動にチェックするようになっています。(解説A,B)
- STEP1:
- 無理のないローン負担額の範囲で借り入れ金額を決定してください。
その他、頭金や住宅取得援助金などの額を記入し、総予算を把握します。
ここで予め記入された諸経費等から建設費+設計料にどれだけ掛けられるかを逆算しています。(解説C) - STEP2:
- その予算内でどのぐらい規模・グレードの建物が建てられるか試算します。
必要と思われる床面積・グレードに応じた施工単価を記入し、概算の建物価格を割り出します。
また、設計料も自動で計算されます。(必要に応じて料率を変更してください) - STEP3:
- 諸経費・付帯工事などをチェックします。
細かい内容は難しいので、私のほうで概算の金額で記入してありますが、敷地の条件に応じて加算すべき項目は加味していません。ご自身でわかる範囲で記入してください。
(地盤が緩い場合等の場合、地盤改良の費用等が必要になります。)引越しや解体費用が発生する場合でおおよそ450万円必要という結果になっています。(建て替えでない場合は250万円)
項目だけでもご確認いただき、建物以外の費用でどんな金額が必要になるのかご確認下さい。 - STEP4
- 建設資金と建設に必要な費用を照らし合わせ、計画が破綻していないかチェックします。
エクセルでは予備費という項目で、差額を表示しています。(解説D)
以上で試算終了ですが、まずはシュミレーションして大体のイメージを把握できれば良いかと思います。
費用が足りないのであれば、面積を少なくして建てる事や、寝室等のプライベートエリアはグレードを落として建設費を少し下げてみようとか、ある程度の覚悟を持って建築家や担当者との打ち合わせに望めば、頑張って素晴らしいアイデアを出して乗り切ってくれる事と思います。
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