Portfolio / 竣工写真ピックアップ
Concept / コンセプト
北欧雑貨とアンティークの家具などを多数お持ちの夫婦の家。
テーマはずばり「北欧」の住宅。
持参の家具や雑貨をどのように配置し取り入れるか?
ゆったりとした落ち着いた雰囲気の空間を演出するカギとなります。
また、敷地は新しく開発された住宅地で、周辺には神社の森が見えるポイントがありました。
この神社の木々を借景に取り入れながら設計するには一つ問題があって、周囲の宅地は生産緑地のまましばらく家が建つ予定がなく、将来の街の変化を予想して設計する必要がありました。
つくばエクスプレスの高架も眺める事が出来る為、夜落ち着いた気分で眺めながらお酒を飲める場所があると嬉しいとのことでした。
Location / 周辺環境を読み解く
敷地の最大のポイントはこの神社。
はじめに敷地を見た時に大きな木々がたくさん植わっており、これを借景として取り入れたいとすぐに思いました。
しかし、長方形の敷地に対し少し軸がずれたところにあり、普通に建てると取り入れるのは難しい配置でした。
また、敷地に対し突き刺さるように道が伸びており、この圧迫感を和らげたいとも思いました。
この課題を克服するヒントは、お施主さんの手持ちの家具にありました。
円形のダイニングテーブルをレイアウトしながらイメージを膨らませているとダイニングテーブルをちょうつがいのように空間を繋ぐキーアイテムとして使うことを思いつきました。
くの字型のプランはお施主様の家具からヒントを受け、この敷地とも絶妙にマッチした素敵なレイアウトとなりました。
周囲の建物がまだ建っていないので、それらにどのような建物が建つかをシュミレーションしました。
くの字型にすることによって視覚的に隣地との距離を伸ばし、南の庭ができるであろう方向へと視線が向くようになりました。
また、道路の形状などから隣地の駐車場の位置なども想定し、借景の取り入れ方を考えています。
くの字型にすることによって産まれた空地を駐車場とアプローチに。
道路に対し角度がつくことによっておかえり玄関(※後述します)の視線を和らげます。
スレートと筑波石を使ったステップが特徴的で、写真はまだ植栽が途中ですがお施主様が住まいながら心地よい通り庭を作り上げる予定です。
Idea&Detail / 家造りのアイデア・設計のポイント
視線の先に
リビングからは洗面室越しに神社の緑が見えるようになりました。
1階を完全に神社に向けてプランニングする選択肢もあったのですが、”神社”らしい要素はあまり借景として取り入れたくなかったので小窓で切り取られた緑を眺めることとしました。
家の奥からは隣地の駐車場想定箇所越しに神社の借景を楽しめる予定ですが、こればっかりは実際建ってみないと解りません。
建築家であればこうやって建てるだろうという想定で建蔽率などを見越しての事なのですが、生産緑地の間は無条件で借景を楽しめているのでそれだけでもメリットがあると思っています。
その代わり、寝室の一角ののんびりカウンターからはゆったりと借景が楽しめるようにしました。
朝、目が覚めると素敵な緑がお出迎え。休日にはここで朝食をとる予定となっています。
夜はしっとりとバーのような雰囲気で、数百メートル先のつくばエクスプレスの光の帯と心地よいドップラー効果音を嗜みながらくつろぐ事が出来ます。
奥様は家で仕事をしているのでその日の気分で仕事場を変えたいという要望もあり、ここでの仕事はより良い効果を生み出す事と思っています。
二つの書斎と寛ぎのスペース
この家も「House in Library」と同様二つの書斎があります。また、お互いの机からテレビの見える環境でありたいという要望で、その解決策にもくの字型プランが一役買っています。
先ほどの寝室ののんびりカウンター同様、このライブラリースペースの一角にもちょっとした場を作り家の中にいながら気分を変えられるようにしています。
SOHOだからこそ机周りだけでなく、行う作業によって気持ちの良い場所を見つけながら働ける環境を作りたかったのです。
照明に負けない空間
リビングの照明はポール・ヘニングセンの傑作PH Kontrast(PHコントラスト)。
実に良いデザインです。
普通の空間ではこの照明に負けてしまってアンバランスになるのですが、勾配天井の吹き抜けとしてコーヒーテーブルの上部に吊るすことで空間を引き締めています。
夜は間接照明とPHコントラストの灯りでゆったりとした寛ぎの空間へと生まれ変わります。
メリハリをつけて
予算配分の関係でシンプルなシステムキッチンやユニットバスを採用し、その代わりにキッチンのバックセットや、手元の収納やパントリー、タイル壁などに予算を回しました。
インテリアや雑貨を引き立てるためには適材適所の収納は必須です。造り付けの家具はできるだけ減らさずに既製品でもバランスを崩さない場所には採用しコストコントロールをしました。
おかえり玄関
建築家の自邸であるAkatuki Houseでも採用した”おかえり玄関”
もう少しいいネーミングを考えたいところなのですが(笑)・・・
玄関は出入りのタイミングで必ず立ち止まる場所。
子供が学校から帰ってきたり、家族が外出する時に声を掛けやすくする仕組みがこのおかえり玄関です。
元気にいってきま~すはもちろん、何か嫌なことがあって落ち込んで帰って来た時などに家族の表情などを見逃さないきっかけになると思っています。
そして、万一夫婦喧嘩をしたとしても、必ず顔を合わす。
独立した玄関と違って、靴を脱ぎ掃きする時間が関係修復や、家族の悩みの発見などに役立てばと考えています。
しかし、外とダイレクトにつながってしまうために、温熱環境や虫の侵入に対しては弱点になります。
また、宅急便などの荷物の受け取り時にも中が見渡せてしまったりすると具合が良くありません。
それらの解決策や、理解をしてもらった上で採用させていただいています。
また、玄関をリビングに取り込むことで空間を大きく使えるのでメリットも多いと思っています。
トイレにも遊び心を
設計がほぼ完了したころに、お施主さんが手に入れたアンティークの鏡。
それをどこかに使えないかという事で、トイレのデザインを急遽変更して備え付けることにしました。
縦向きの鏡だったのですが、横使いにして違和感なく納めました。
また、トイレの扉には蚤の市で手に入れたというアンティークのタイルを埋め込み、旅の思い出の品に日々触れながら生活できるようになりました。
好きなものに囲まれて暮らすってとても素敵ですよね。
今回はそんな大好きに囲まれて暮らす家の設計を楽しみながら行うことが出きました。
引き渡し後、家具や雑貨で飾られた空間がとても活き活きとしている姿を見て嬉しく思うのでした。
平面図や竣工写真など掲載しています。