Portfolio / 竣工写真ピックアップ
Concept / コンセプト
都心の狭小地に建つ三階建ての住宅です。
限られたスペースを造り付け家具を駆使して広々と使いやすい住空間を実現しました。
本棚に囲まれて暮らしたいというお施主さんの要望から生まれたリビングは二つの書斎付です。
二つの道路に面し、厳しい道路斜線制限がかかるこの土地ですが、
天空率を駆使し通常では建てられない範囲までボリュームを広げ最大限の土地活用をしました。
面積的な狭さを感じさせず、抜け感を確保するのに本棚という存在はとても悩ましいものでした。
また、それぞれが机に座りながらTVを見たいが、お互いのテリトリーは確保したいという要望も頭を悩ませました。
それらの要望を、周囲よりも床を下げたリビングを囲むように配置しながらフレキシブルな可動本棚を利用することで解決しました。
Idea&Detail / 家造りのアイデア・設計のポイント
思い出の家具を自然な形で利用する
お施主さんがご実家から持参して大切に使っていた家具。
それをなんとか新築で活かせないかという相談を受けました。
彫刻の施された扉とガラス扉が印象的な収納で、ただ単純に置くスペースを確保するという選択肢もあったのですが、狭小物件故に家具に組み込む事の方がこの建物には合っていると判断しました。
用途的にも飾り棚としての位置づけでリビングの一角に組み込む事にしました。
家具と壁との間を自然な形で繋ぐのがポイントで、マガジンラックを造り付けることで違和感なく納めています。
天空率を駆使してボリュームを確保・家は中から作る
天空率とは道路斜線制限を緩和するテクニック。
実はとても有益なのですが、設計者としてはとても大変になるのであまりやりたがらないのが天空率です。
ですが道路を二方向で囲まれている敷地の場合、通常の道路斜線では削られてしまう部分が多すぎるので使い方次第ではメリットがとても多いのです。
具体的には道路斜線制限内で建てられる建物と比較して、道路にあたる日照の量が多い建物となれば道路斜線からはみ出ても建築することが可能なるのです。
周囲に余白が出るような建て方だと有利に働くのと、角地のボリュームを抑えることでその余白を他に割り当てやすくなります。

ですが、そこから導き出される形は無数で道路斜線の様に絶対的なボリュームが決まらないのでその都度天空率をチェックする必要があります。
また、内部の空間をイメージしながら天空率をチェックするのは本当に骨の折れる作業なのです。
この作業には勘も重要で大体のあたりを付けながら内部空間のイメージを深め、ボリュームチェックを繰り返し絞り込んでいくのです。

そういった作業を積み重ね、最終的にはこの様に勾配天井の美しいリビングが完成しました。
実はこの勾配天井の上は3階部分の寝室の押入れが隠れていたり、窓からの光を吹き抜けに届けて明るさを確保したりと、複雑に絡み合っています。
もちろん、リビングのソファに座った時には隣のアパートの屋根が見えない様に視界をコントロールしていたり、様々な計算がされているのです。
こういった制約が多い中では本当に建築家としての力が試されますね。
→天空率に関してはこちらでもう少し詳しく説明しています
可動本棚で空間の有効活用
[su_tabs][su_tab title=”通常の状態” disabled=”no” anchor=”” url=”” target=”blank” class=””]
※タブをクリックして写真を切り替えできます[/su_tab]
[su_tab title=”キッチン利用時” disabled=”no” anchor=”” url=”” target=”blank” class=””]
※タブをクリックして写真を切り替えできます[/su_tab][/su_tabs]
周囲を囲む本棚の一部を可動本棚としています。
実はこの本棚はキッチンを隠す扉にもなるのです。
メインのキッチンは周辺のレストランというコンセプトで必要最低限のキッチンセットなのですが、それでも普段使いの際はシンクだけはそのまま利用できるようにしています。
本棚に囲まれたいという要望を叶える苦肉の策です。
見えない部分に力を注ぐ


狭小物件だからこそひとつ一つの部材が重要になります。
例えば地盤改良の杭で考えると50本の内1本がミスなのと20本の内1本がミスなのとでは意味合いが異なってきます。
その為、鋼管杭併用の柱状改良として安全性を高めたり、耐震等級を上げそういった施工ミスがもしあったとしても他で担保できるように気を使っています。
また、駐車場がビルトインでオーバーハング部分があるなど複雑で表面積が大きい建物なのでセルローズファイバーの吹込み断熱を採用しました。
メーカーの責任施工でとても丁寧に施工を行っていただきました。
おそうじ浴槽
この当時はまだまだメジャーじゃなかったお掃除浴槽を採用しました。
3階建てだとこういった便利アイテムの利用も検討に入れたいところです。
家具を予めイメージしてプランニング



プランニング段階から購入予定のソファなどお施主様と打ち合わせをしてきました。
予めソファの大きさと座面の高さを把握することで造り付けのデスクのサイズなどを調整しています。
やはり、竣工直後の姿に比べ家具などが納まった姿の方がしっくりきます。
それは造り付けの家具や造作と同じくらい家具のレイアウトを踏まえて設計しているから。
家具の色なども本やオブジェ、パソコンなどが設置された状態でのバランスを考えているので、何もない状態だと色が濃すぎると感じると思います。
在るべきものがキチンと納まった姿こそ竣工写真としてふさわしいと思っています。
ですが、入居後にゆっくり写真を撮れる機会はそう多くないので、ご協力いただいているお施主様には感謝ですね。