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工事費はどう比較すべきか?注文住宅を安く建てるには?
注文住宅の工事費ってとっても複雑でなかなか理解できませんよね。
ハウスメーカーのような体系化された商品の場合は、標準工事費が設定されており大体の目安を知ることが出来ます。
しかし、この標準工事費というのが曲者でいざ打合せを進めてみると、それはオプションです。それは別途工事です。といったように標準外の工事費があれよあれよと加算され工事費が膨らんでしまうものです。
それではよく耳にする坪単価とはなんなのでしょう?
坪単価のカラクリ~実際の工事費は?
坪単価とは各メーカーの標準工事費を建坪で割り、坪当たりの価格を示したものです。
様々な仕様の異なるハウスメーカや工務店の価格を比較する為の指標です。
しかし、この坪単価は様々なメーカーが都合の良いように脚色しているのも確かなのです。
「坪単価」だけを比較し住宅の良し悪しを決めて良いものでしょうか?
実は、この坪単価は結構簡単に操作できてしまうのです。
その内訳をご紹介しましょう。
坪単価を安く見せる裏技
延べ床面積でなく施工床面積を使う
坪単価を示す時に延べ床面積でなく施工床を用いることが出来ます。
施工床とは、延べ床面積に吹き抜け部分やルーフバルコニーの床面積の一部を加算した面積です。
一般的に
施工床面積=延べ床面積+(小屋裏面積+吹き抜け面積+ルーフバルコニー)×1/2
と計算することが多いですが決まったルールがないため小屋裏面積などを1/2しなかったり、玄関ポーチやバルコニー部分を加算してさらに割安に見せるケースも在ります。
屋外給排水工事費、屋外電気配線工事費等が別途
ハウスメーカーの場合は建物の本体工事以外は別途工事とすることが通例です。
カタログ等に記載されている値段だけではまだ住むことが出来ないのです。
こういった付帯工事だけでも少なくとも120~150万円は追加で掛かるでしょう。
標準品を安くしてオプション工事で元を取る
標準オプション以外の工事は割高になります。
それは、ハウスメーカーが仕入れ値を安くする為に年間何セット購入するから○○円割り引くようにとメーカー側と交渉しているからです。
ユーザーが皆標準外の工事を選んでしまうとその目標を達成できなくなる為に、オプション工事を割高に設定せざるをえないのです。
メーターモジュールを採用して坪単価を安くする
一般的な910mmの尺モジュールではなく
1000mmピッチのメーターモジュールを採用することで坪単価を安く見せることが出来ます。
それは、同じ住宅の面積を少し拡大したからといって極端にコストが上がらないからです。
廊下や寝室が少し広くなっても高くなるコストはたかがしれていますが、面積が増える分割安に見えるのです。
大きい家ほど安く見える、小さい家は高く見える
住宅の単価を押し上げるキッチンや浴室等住設機器の数は30坪の家も40坪の家もそう変るものではありません。また、外壁の面積や屋根の面積、建具の数など様々なパーツが相対的に少なくなる為安く見せることが出来ます。
ただし、総額が安くなる訳ではありません。床面積あたりの工事費が安く見えるだけという事を忘れてはいけません。
特別な条件は全て除外
地盤が悪い、道路が狭い、敷地内高低差や防火地域などの特別な条件のある場合は標準外の工事が高くなります。
地盤の状況などは予め住所や近隣の地盤データーや建物などから想定できるのですが、そのリスクを契約前にキチンと伝えてくれるケースはそう多くないでしょう。
木造であれば地盤補強が安く済むとか、一階がRC造の混構造の方が敷地内高低差を有効活用できるなど、そういった敷地条件にあった工法の選択が重要なのですが、先に工法を決めてしまうと後から調整が難しくなります。
坪単価で惑わされない本当に安い家とは?
このように坪単価は工事費を比べる指標であるに係らず、実は余り当てにならないのです。
上記の図のようにトータルコストの高い家(右図)でも、直接的に掛けられた材料費・労務費の割合の高い家のほうが割安な場合があります。
工事後に残る財産となる部分(材料費・直接工事費)にどれだけ予算を割けられたか?
見えない経費を明らかにする事で、建物を安く建てる為のチェック項目が解るようになります。
極端に安い家はない
極端に安い家というのは存在しません。材料費や施工費等を差し引いて業者があげる利益はそれほど多くありません。恐らく各工務店やハウスメーカーの業績を比較してみても解ると思います。
利用する材料や躯体・断熱性能に応じた価格となります。
坪単価でなく会社の経費を比較する
しかし、ハウスメーカーなどの工事費には実は広告宣伝費や本社経費など様々な
見えない工事費が含まれています。
それらの経費は工事に直接課せられない為、逆にその分損をする事があります。
もちろん本社経費や研究開発費などが全てが無駄ではなく、それにより効率的な経営が可能となり安く出来ている部分もあるわけですが、派手な宣伝やショールームなどを常設している会社はその分余分な経費が掛かっていると考えるのが素直な考えです。
また、営業マンの経費等も見えない形で工事費に含まれる事になります。
建物として形が残る材料費・最小限の人件費以外は竣工後は何一つお施主様の為に残りません。
住宅展示場の経費や宣伝に使われているタレントさんや販促グッズなどは、全てお客様の工事費から支払われている事になります。(ただし、販売戸数の多いハウスメーカーであれば一戸あたりの経費は少なくなります)
見積書の内訳も様々で安く見せる工夫
工事の見積書の内訳は様々ですが、実は設計料や諸経費などは割安に見えるよう工夫されています。
一般的に会社の諸経費は2~3割見込まなければ経営が難しいのですが、諸経費に正直に書いてしまうと「お宅の会社は儲け過ぎじゃないですか」と指摘されてしまいます。
そういった経費は工事の各項目に上乗せしたり別項目で計上します。ですから、設計料は安いのだけれども、確認申請料という項目で徴収したり、商品開発費という名目で紛れ込んでいる事が有ります。
そういった諸経費は坪単価に示されていないケースもあるので注意が必要です。
また、定価のある工事ほど安い見積もりの場合があります。他社と比較されない項目で元を取るケースです。そういった見積もりの仕方の違いによって工事項目によって安くなる場合、高くなる場合があるのです。
希望に合ったハウスメーカー・工務店を見つける
先に述べたとおり、標準外の工事が少ない方が割安で建てることが出来ます。
その為には自分の好みに合った商品を選ぶことが重要です。
敷地形状や、周辺環境、法的制限にマッチしたメーカーであれば安く建てることが可能となります。
出来るだけオプション工事が少なく、始めから希望に近いハウスメーカー・工務店を見つける事。
モジュール体系(壁の寸法を何ミリづつ変更可能か)、建物の高さなどの設定が敷地にマッチし無理なく設計が可能なメーカーをピタリと捜し当てることが出来れば割安な家を手に入れることが出来ます。
後々のメンテナンス・ランニングコストを重視する
建設時のコストだけで新居の安い高いを評価すべきではありません。
定期的に必要になるメンテナンスコスト、設備機器等のランニングコストを併せて総合的に評価することが重要です。
30年しか住めなくて2000万円の家か60年住めて3000万円の家がが良いか?どちらがお徳か明白です。
初期投資によっては後の光熱費を抑えることも出来るし、ただ単に初期の工事費のみを比較する建て方は得策ではないのです。
せっかく導入した床暖房もガス代が高くて使えないのでは全く意味がありません。家計の事情や将来の年金暮らしの状況など総合的に考え初期投資を行うべきかをキチンと考える必要があります。
ライフスタイル、子供の将来への投資
ただ単に安い住宅を建てたいと思う方は余りいないと思います。賃貸マンションでは成し得ない生活を手に入れる為に注文住宅を建てるという選択をしているはずなのです。
しかしながら、建築を考える中で現実的な問題に突き当たり、その目的が曖昧になり自邸を建てる事だけが目的になっている方がいらっしゃいます。
もう一度、家を建てる目的・意義を家族みんなで話し合ってみてください。
家を完成させることだけが家造りではありません。リフォームやリノベーション、希望の面積を削ってコンパクトに住むことで得るワンランク上の暮らし。様々な選択肢がある中でもしかしたら、まだそういった別の暮らし方、建て方がある事に気が付いていないだけかもしれません。
夢のマイホームを建てるのが完成でなく、マイホームで夢の生活を送るのが本来目指す目的のはずです。コスト面で減額を重ね目的を見失わないように、そのことはキチンと念頭にいれ家造りを行ってください。
総工事費で考える家造り
家造りを考える時に「4LDKで吹き抜けの家が欲しい。床面積は40坪ぐらいの家。」などと具体的な要望を挙げるお施主様が多いのですが、実は建築はそんなに簡単ではありません。
こういった面積や空間ありきの設計はあまりお勧めしません。
それは、ご自分の予算の中から40坪の家だと60万円/坪ぐらいの家が建てられるのかなという順番で家造りを考えるやり方があまり得策ではないと思うからです。
総工事費を決めた中で、どんな風に暮らしたいか?どんな材料を使うか?その要望ではどんな間取りが可能か?どれくらいの大きさの家を建てればいいのかを模索する方法が良いと思うからです。
しかし、ハウスメーカーや工務店に予算を全て告げるのも少々不安があります。。。
何社かのメーカーさんに予算内で出来る住宅を提案して戴き内容を比較するというのも良いのではないかと思います。
要望に応じた建設費になる~パソコンに例えると
結局の所、ハウスメーカーや工務店の坪単価とはベースの価格で、そこから積み上げ式に予算が膨らんでいくわけです。
床暖房を入れたり、無垢の床材を利用したり、オール電化住宅にしてみたり。
そういった要望に応じた予算が計上されて最終的な工事費になります。
始めからハイスペックなパソコンを購入し、ソフトが始めからインストールされている機種を選ぶのか?
それとも、最小限の機能が使える機種を選んで後からメモリーやソフトを追加していくのか?
なんか家選びってパソコン選びと似ているところがあると思っています。
ハイスペックデスクトップパソコンタイプ(インテル) | |
予めOSや表計算ソフト等がインストールされているパソコンタイプ。 使わないソフトも予めインストールされてしまっている。 サポートセンターが充実。 →大手ハウスメーカータイプ |
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ノートパソコンタイプ(ノン・インテル) | |
標準的なソフトなどは予めインストールされているが、基本性能がデスクトップタイプに比べると劣るモデル。
→中堅ハウスメーカー・工務店タイプ |
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海外モデル安価パソコンタイプ(ノン・インテル) | |
最小限のプリインストール。インストール済みのソフトも安価なもの。
→坪単価20~30万円を売りにするハウスメーカー |
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デスクトップパソコン(Mac) | |
洗練されたデザインとマニアックな機能。 ウィンドウズに比べると故障しやすい? Windowsも搭載したハイブリッドモデル(性能も重視した)もある。 →設計事務所(デザイン重視)タイプ |
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マックブック(Mac) | |
よりデザインに特化したモデル。
→デザイン事務所・設計事務所タイプ |
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自作パソコン(Windows) | |
フルオーダーメードのパソコン。基本スペックやソフトなど全て希望通り。
→設計事務所(機能重視)、フルリフォームタイプ |
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PDA・スマートフォン(携帯端末) | |
メール送受信、WEB閲覧等最小限の機能。 →ローコスト住宅タイプ |
私の勝手な意見ですがイメージとしては伝わりやすいかなと思い比較してみました。
どの会社がどの分類に入るかは簡単には選べませんが、各業者の特徴の差がこんな風に別れているというのが直感的に解るかと思います。
男の人にしか伝わらない例えだったらすみません(笑)
私が言いたかった事は、求める機能に応じたランクがあり、価格があるということ。
新居に求めるものが何か?
まずそれを見定めた上で、どのランクの家造りを行うか?
その中で比較検討し家造りを行う事が大切だと思うのです。
ノートパソコンをデスクトップパソコン並みにカスタマイズして使おうと思っても物理的な無理がある訳です。
まず、ベースをどれにするか?
まずそれを見定めてその中で安く建てられる工夫を考えてみましょう。
設計事務所に頼むと建設工事費は高くなるのか?
設計事務所に頼むと高くなると思われがちですが、そんな事はありません。
設計事務所に依頼していただくお客様はそれなりにこだわりを持った方が多い為、その要望に応じて高くもなり、安くもなるというだけなんですね。
ちなみに設計事務所に設計を依頼する場合は、直接工事を引き受けるのではなく工務店に工事を依頼する事になります。
その場合、そういった広告費を掛けず、ショールームなどを持たない工務店を選ぶ事で工事費を抑えることが出来ます。
また、ハウスメーカーやフランチャイズ工務店には内部で設計する設計経費や営業経費が加算されますが、そういった設計部や営業部のない工務店では会社経費が少なく工事費が建物に直結した建て方が可能となります。(そういった部門のある工務店でも諸経費の減額を交渉する事が出来ます)
相見積もりを取る事により”同じ建物”を競争見積もりすることが出来る為、さらにシビアな金額を提示する事が可能となります。
もちろん設計料が上乗せになりますが、
見えない工事費・営業経費を取り除く事で、その費用は随分圧縮されるんですね。
そういったトータルコストで高いのか安いのか?という議論が本来されるべきなんですよね・・・
家自体に掛けられた材料費と労力が満足度の高い住宅を作り上げるのです。
もし、ハウスメーカーで建てる場合と設計事務所に設計を依頼する場合で迷われたらその事を思い出していただけたらと思います。
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